裏磐梯長瀬川
長瀬川と言えば、秋元湖から流れ出て猪苗代湖に注ぐ河川を思い浮かべるのですが、実際には、桧原湖がその源で、中瀬沼さらに乙女沼を介して小野川湖に注ぎ、秋元湖からの流れと合流しています。この一帯は磐梯山噴火時の火山岩が厚く堆積していて、その間を縫う様に無数の流れが湿地を作りながら流れています。
かつて私が観察地にしていた長瀬川は乙女沼近くで、15年ぶりに訪れてみました。さすがに15年は長く、環境は全く変わってしまっていました。当時はまだ河川沿いの小道の周りは刈りはらわれて簡単に入ることができました。しかし、今回訪れてみると灌木が密生し、何と樹木まで生えて小道が無くなっていました。まるで藪漕ぎ状態でかつての観察ポイントにたどり着かなくてはなりませんでした。
8月2日当日は、9時半ごろから観察を始めましたが、すでにオジロサナエの産卵が始まっていました。木漏れ日が射して、わずかに水が流れるような場所の小石にオスが止まっています。産卵ポイントは3か所、お互いすぐそばにあって観察には好都合です。
メスの飛来を待つ雄
間もなくメスが水面低く、素早く飛んできて近くの草の水際に止まり卵塊を作り出しました。ほどなく飛び立って、1回流れに尾端を付けて放卵しました。また、同じところに止まるのかと思いましたが、止まらずどこかに行ってしまいました。ふと今度は先ほどオスがいた場所の小石を見ると、メスが止まっています。オスはどこにいったのか見当たりません。メスは早速卵塊を作って、チョンと飛んで水面に産卵し、また同じ場所に止まって卵塊を作って産卵する。これを4回ほど繰り返して飛び去りました。この産卵が一般的な産卵形式ですね。
この日長瀬川では、先ほどのかなりの流速がある流れに繰り返し産卵する様式と、この木漏れ日の射す水が浸み流れるような場所で、水面に産卵する2通りの産卵様式を観察できました。また、流れに飛来したメスが水面に産卵を繰り返した後に、だらっと水面に尾端を付けてかなりの時間動かないケースを3回ほど観察しました。これは確認してませんが、産卵していた可能性があります。
流れで産卵が多く監察された場所
流れで産卵が多く監察された場所
産卵場所を確認する
この時期、この川にはオジロサナエの他に数種のトンボが見られます。オジロサナエの産卵の合間に、次々とオナガサナエが産卵にやってきて、ついそちらが気になって撮ってしまいます。このトンボの産卵は早朝と夕方に多いのですが、ここではどうも関係無いようです。複数で産卵している時もあり、結局、地域・場所にもよるのではないのでしょうか?
今度はコオニヤンマの産卵です。オジロサナエの産卵ポイントにも入って来て産卵します。ここでは本種が優占種となっていて、種間、異種間問わず、激しくオスは追い立てます。なぜか上空にはオオルリボシヤンマが常時飛び回っていて、コオニヤンマとつばぜり合いが絶えません。何でこのような場所でテリトリー飛翔のような飛び方をするのか不思議でしたが、観察を続けていると、なんとメスが産卵に飛来するのです。結構流れが速いのですが、植物群落の水際に潜り込んで産卵を試みます。オオルリボシのオスは直ちにそれを捕えようと突進しますが、コオニヤンマが黙っていません。ガチャガチャと凄い翅音を響かせて水面に落下しました。オオルリボシヤンマのメスはその隙に、「まあようやるは」、と言わんばかりに下流へゆうゆうと飛び去りました。
赤いボンベはクマよけスプレー, この場所はこれ必携!油断できない.
コオニヤンマに気を取られている内に、次々にオジロサナエが産卵に訪れていたことに気が付きました。見れば、流れの中に少し大きめの石が露出し、背後に水生植物が生えた場所があり、先ほどから数頭のメスが産卵に飛来していました。改めて注視しているとメスが川面すれすれに飛び回っていきなり、その石に止まりました。そして例によって卵塊を作ると少し飛んで、チョンと水面に産卵して、また元の場所に止まり卵塊を作ります。この写真の場合は3回産卵しました。
オジロサナエの産卵が昼過ぎに一時絶えた時、下流の方で何か大きなサナエがホバリングしているのに気が付きました。何だろうと急いて近づくと、いきなり目の高さまで飛び上がってホバリングします。ヤマサナエのメスです。まだいるのですね。そばにるコオニヤンマはなぜか無関心です。ヤマサナエはまた落ち着いて産卵を始めました。この日、ヤマサナエを見たのはこのメスとやはり下流に縄張りを張っていたオスの2頭だけでした。オジロサナエの産卵は16時過ぎには終了するようで、この観察地も完全に樹林の影になって、暗くなります。
どうしても、サナエに眼が向いてしまいますが、この川にはアマゴイルリトンボが川岸の帯水になった場所に多産していて、この時期にも個体数は多いです。さらに、生き残りのカワトンボも数が増してきたハグロトンボを追い払うなど、まだまだ存在感を示していました。確認はできませんでしたが、ホンサナエのメスが産卵していたように見えました。間もなく、ミルンヤンマとコシボソヤンマが同時に見られだすようになります。両種がこの川に現れるころ、これまでの多くの種類が姿を消すのです。
こんにちは。
返信削除色々いて面白そうな川ですね!
白河ではまだオジロ見れてません。