2024年1月31日水曜日

ミルンヤンマ、アオヤンマ、ネアカヨシヤンマ、そしてヤブヤンマの学名が変更になった!

(このブログはパソコンで読んでください。携帯では文字化け行づれが起こります。)
 先ごろ行われた日本トンボ学会で、トンボ界を代表する若い講演者がクイズ形式で最近のトンボ事情を面白おかしく発表されました。その中にミルンヤンマの学名変更の話があったような気がしました。あまり事の重大さを感じずにその時は終わってしまっていました。帰宅してからパソコンのメールを整理していたら、ロシアの Kosterin氏から別刷りが送られていたことに気が付きました。読んでみるとミルンヤンマの学名変更に関する論文でした!あ、これかっ、と。

 この論文は良くまあ、ここまで調べたものだと感嘆する内容です。結論から言えば、要は命名法に従うとこれまでのミルンヤンマ属 Planaeschna は Aeschnophlebia 属の subjective synonym (主観異名)となり、これによって従来のPlanaeschna 属の種は全てAeschnophlebia 属に移り(Kosterin、2023)、一方 Aeschnophlebia属に属していたアオヤンマ、ネアカヨシヤンマは分子系統分類学的に類似性が高いBrachytron 属に、それぞれ Brachytron longistigma (Selys, 1883)、Brachytron anisopterum (Selys, 1883) として移されたのです( Schneider et al. ,2023、国際命名規約によって赤の部分にスペルが変更されているので注意)。
  Kosterin氏が作成した新しいミルンヤンマ属の表を論文から抜粋して載せます。
 
               
                       KOSTERIN (2023)より 
                 表をクリックすると大きくなります

 この論文は戦後の昆虫界をけん引した、昆虫雑誌「新昆虫」に連載された朝比奈正二郎博士の
日本の蜻蛉(1957年) Kosterin氏が読んだことが発端となって作成されたようです。実は、これにはミルンヤンマの項で非常に興味深いことがらが記述されていたのです。
 1883年に de Selys Longchamps, E.は「日本のトンボ」という題目で67種のトンボを報告しています(Annls Soc. Ent, Belg. 27: 82-143.)。この論文では数種の新種の中にAeschnophlebia optata という♂のアオヤンマの仲間を記載しました。また同時に同属でアオヤンマとネアカヨシヤンマも新種として報告したのです。ということは日本にはその時点でアオヤンマ属のトンボが3種が居たことになります。A.optata は記載文からはその特長がつかめず、長らくトンボの研究者を悩ましました(時としてヨシヤンマなどの和名で呼ばれたりしました)。

 しかしこの問題は朝比奈博士が1953年にブリュッセルの博物館を訪れたことで氷解しました。Selysコレクションの中にあるoptata のタイプは何とミルンヤンマだったのです。ただそれによって起こる分類学的な処置まではさすがの博士も気が回らなかったようです。当時新な図鑑作りに奔走していた博士は日本産トンボリストから単にAeschnophlebia optataを削除することだけで分類学的な処置には手をつけることはなく終わってしまったのです。

 一方のミルンヤンマは同じ文献に、これも新種として Aeschna milnei の学名で記載されています。その後 McLachlan (1896) は A. milnei 1種のためにPlanaeschna 属(ミルンヤンマ属)を起こし、ここに A. milnei を移しました。これが今回の属名変更の火種(?)となりました。朝比奈博士があの時点でoptata をmilnei のシノニムとして処理していれば、Planaeschna 属は残ったと思います。
 Kosterin氏は 新昆虫を読んでAeschnophlebia optata Selys, 1883は Aeschna milnei Selys, 1883のシノニムであり、未だに処置されていないことに気が付いたようです。さらに Aeschna milnei はその後 Planaeschna 属に移されていますから、Aeschnophlebia optata は未だに有効種名として残った状態にありました。そこで、彼はこれらを命名法に従って処置したわけです。
  Planaeschna milnei McLachlan, 1896 と Aeschnophlebia optata Selys, 1883 は共にミルンヤンマですから、属名Aeschnophlebiaが先取権によって残り、Planaeschnaは消えることになります。milnei は Aeschnophlebia milnei (Selys, 1883)となって、 Aeschnophlebia optata Selys, 1883 がシノニムで消える処置がされました。ここでようやく、Selysが1883年に発表した日本のトンボの中のミルンヤンマ問題が解決したのです。

 ですが、Planaeschna 属のトンボが大挙して Aeschnophlebia 属に移ることはアオヤンマ属としてあったオヤンマ、ネアカヨシヤンマはどう扱うのかという問題が生じます。
 Selysの論文では optata はAeschnophlebia 属のタイプですから、アオヤンマとネアカヨシヤンマは他の属か新属を起こして移らなくてはなりません。しかし時期同じくしてSchneider et al. , (2023) が新たにヤンマ科の分子系統分類の研究をおこなって、オヤンマとネアカヨシヤンマを Brachytron 属に移す処置をしていました。何といいタイミングでしょうか。この Brachytron 属は B. pratense というのがヨーロッパに居て
(ちょうど♂はアオヤンマ、♀はネアカヨシヤンマを小さくしたような種です)、
朝比奈博士もかねて、この属とAeschnophlebia 属は関係が深くヨーロッパと極東における地域的な置換種であるようなことを述べていますから、まあ落ち着くところに落ち着いたわけです。
 このことから日本産ミルンヤンマ、アオヤンマさらにネアカヨシヤンマの学名は下のようになりました。この結果、再び文一出版「日本のトンボ」は改訂版を出す必要性がでてきたわけです。こうしょっちゅう学名変更が起きては買う側としてはたまりませんね。

2/3追記、 うっかり忘れていました。Schneider et al. , (2023) ではさらにヤブヤンマの属名 Polycanthagyna  Fraser, 1933 も 属名 Indaeshna Fraser, 1926 のシノニムとなり、日本のヤブヤンマは新たに Indaeshna melanictera となります。Indaeshna 属は東南アシアを主に5種知られています。    

ミルンヤンマ=Aeschnophlebia milnei (Selys, 1883
アオヤンマ= Brachytron longistigma (Selys, 1883)
ネアカヨシヤンマ= Brachytron anisopteum (Selys, 1883) 
ヤブヤンマ=Indaeshna melanictera ( Selys, 1883)


引用文献

朝比奈正二郎 (1957) 日本のトンボ 12. 新昆虫, 東京, 10(8): 49–55.
Selys Longchamps, E. (1883) Les Odonates du Japon. Annls Soc. Ent, Belg. 27: 
   82-143. 
Kosterin, O. E. (2023) Nomenclatural reconsideration of the genera  
   Aeschnophlebia Selys, 1883 and Planaeschna McLachlan, 1896 (Odonata,  
   Aeshnidae). Zootaxa, 5353 (5): 495–500.
Schneider, T., Vierstraete, A., Kosterin, O.E., Ikemeyer, D., Hu, F.-S., Snegovaya, N.  
   &  Dumont, H.J. (2023) Molecular phylogeny of Holarctic Aeshnidae with a focus  
   on the West Palaearctic and some remarks on its genera worldwide (Aeshnidae,
   Odonata). Diversity, 15: 950. https://doi.org/10.3390/d15090950


























2024年1月27日土曜日

オツネントンボの越冬に関する最後の観察

 オツネントンボはいつどこで越冬に入るか

 これが最大の関心事です。以前のブログでは標高700mの山地での越冬を集団越冬の形で観察してきました。しかし、平地での本種の越冬生態は少し事情が違うようです。12月9日この日は非常に暖かく、朝6時は0℃でしたが、昼には16℃に上昇しました。午前10時に気温はまだ9℃だというのに生き残っているアキアカネは相変わらず交尾して、交尾後繋がったまま迷うことなく南の方角に飛び去りました。しかし付近の田んぼを見て回りましたが、産卵しているペアはどこにも見当たりませんでした。
 さて、12月5日にはほとんど姿を見なかったオツネントンボが、この日は斜面にかなりの数が見られました。どこから出てきたのか不思議です。可能性は低いと思いますが、もし樹上で越冬するならお手上げです。
                   
                   この倒木の周辺にオツネントンボが集まる. 12/9

 この越冬地をもっと詳しく見てみることにしました。雑木林の縁に当たるこの場所は水田 
わきの農道に接していて、急な斜面になっています。トンボはこの斜面に見られるのですが、良く見るとそのオツネントンボは極めて限られた場所に見られることが分かりました。斜面のどこにもいるものだと思っていましたが、この日は上の写真に示す、倒木のある一帯に集まっているのです。そういえば、以前山間地の観察では越冬場所周辺の密度が越冬直前に最高になったことを忘れていました。とすれば、この倒木が越冬地になっているのでは?集団越冬の観察では昼にかけて越冬場所に飛来して、そこから歩いて隙間に入り込むことがわかっていますので、昼前に観察してみました。
                     
                    
                       倒木に飛来するオツネントンボ

 オツネントンボは11時頃から頻繁に倒木に飛来するようになりました。飛来した個体はしばらくすると倒木の上を歩きだし、体が入りそうな割れ目を探すしぐさを見せ、中にはスーと入ってしまう個体もありました。しかし、その場合でもすぐに出てきて、他の個体同様1,2分で飛び去ります。それらの個体は倒木からさほど離れていない(1~3m)場所の笹竹の根元に静止し、午後2時ぐらいまで、倒木や周辺の斜面の樹木のひこばえなどに飛来・移動を繰り返します。
 この状況は山間部の集団越冬を観察した時の状況に非常に似ていました。この状況だと倒木の割れ目に入り込んで越冬するにはまだしばらくかかりそうに思います。その間トンボたちは連日倒木に飛来しては、越冬場所となる割れ目を値踏みしているように思えます。何か考えて行動しているようにどうしても思えてしまいます。
                    
               オツネントンボが越冬していたマツの朽木(自然倒木)
 
  12月21日、この日は朝の気温が前日と同じ-5℃となり本格的な冬の季節となりました。オツネンはどうしたかと、現地に行ってみました。相変わらずの風景、何も変わらないように思いました。予想はしてましたが、オツネントンボはもう斜面にはいません。どこに行ったのか、朽木の割れ目を覗いてみてもそれらしい姿はありません。いよいよ分からなくなってしまいました。しょうがないので帰るしかないかと、マツの倒木(完全に朽ちている)をまたいだ時に、うっかり幹を蹴ってしまい、樹皮が剥がれ落ちちしまいました。樹皮が落下したした幹に、あれっ、オツネントンボが顔を出しているではありませんか!
                    
             ドライバーで突き崩した木質部から現れた越冬中のオツネントンボ
 
 樹皮下の材は穿孔性昆虫によって完全に食い尽くされていて、その孔道内に完全に身を潜めています。樹皮はかなりの材を伴って落下してます。オツネントンボは少なくとも樹皮下2~3cmの材部と結構深く入り込んでいるわけで意外でした。どうりで表皮を剥いだぐらいでは見つからないわけです。
 そこで表皮を剥いで材部を崩していくと、次々に越冬中の個体が見つかりました。
                   
                   
        コツが分かると次々に見つかる。一番下は表皮から5cm以上も深い場所で越冬する個体

 ほとんどが単独、あるいは2頭ぐらいでいることが多く、いわゆる何10頭も固まって見られることはありませんでした。このマツの朽木で何10頭もいっしょに入れるほどの大きな食孔は無いのかも知れません。
 さらに類似の環境で、倒木となった主にマツ、スギの朽木を同様に表皮から数センチの深さの木質部に出来た孔道をバールで慎重に崩しながら調べていくと、写真にあるような環境のもとにオツネントンボが越冬している姿を確認しました。やはり、オツネントンボの自然状態での越冬場所は日の当たる場所に倒木となった朽木で、表皮から数cmの深さにある穿孔性昆虫が穿った食孔の中で越冬することが分かりました。もちろん朽木の割れ目なども越冬場所になるのでしょうが、相当深い割れ目でないと越冬には向かないと思います(表面からは数センチの深さがある割れ目)。
 
 長年、自然状態での本種の越冬態を追い求めてきましたが、個人的にやっと確認できたという喜びよりも、やっと終わったかという気持ちが正直あります。

これまでの観察から、以下のことが明らかになったと思います。
1 標高250m、北緯37度20分21秒、東経140度19分23秒 付近の越冬地での越冬時期は12 
  月15日前後である(ほとんどの個体が越冬状態になる時期)。
2 新成虫が現れる6月下旬から7月中旬以降、越冬地となる地域の個体数は次第に増加する。
3 成虫は夜間樹上には上がらず、地表近くのイネ科植物や樹高の低い灌木の枝で夜を明か
 す。
4 越冬期前には夜間や、気温が10℃以下の日中は越冬地近くの植物の根際10~20cmの位
  置に定位することが多く、気温が高ければ盛んに活動して摂食を行う。
5 11月には晴れて、気温が10℃以上でも活動は14時半には終了して、夜に備える。
6 越冬直前には越冬場所となる倒木や朽木周辺に集まり、飛来ー離脱を繰り返すようにな 
 る。この場合、多くの個体が朽木の隙間や穴に入っては、すぐに出て来るなどの行動が見
 られた。
7 越冬は飛来した個体が歩いて朽木の隙間に躊躇なくすぐに入る。飛来は昼前後に見ら
 れる。越冬場所は朽木の木質部深く、表皮から数cmの深さである。穿孔性昆虫が穿
 った食孔内部を歩いて、深い位置にたどり着くものと思われた。






2024年1月24日水曜日

生態学の理論を実証するアオモンイトトンボ(1)

夏井川のムスジイトトンボ
  夏井川は阿高地の最高峰大滝根山の南西麓を源頭とし、田村市、小野町そしていわき市を流れる2級河川(福島県内の浜通りに限って流れる)です。いわき市市街地を流れる夏井川は川幅や堤防も広く、てっきり1級河川だとばかり思いこんでいました。この流域には現在ここでしか見れないキイロサナエ、ナゴヤサナエおよびキイロヤマトンボが生息し、他にも県内では暖地性のアオモンやムスジなどのイトトンボ類が多く、トンボ屋にとっても外せない河川となっています。
 今回は夏井川河口付近のトンボを紹介します。ただここは海に近く、潮の干満の差が大きく、川の中を歩いている場合注意しないと戻れなくなる時があるので、満潮時間には注意が必要です。
 さて、河口の公園から川に入ると、名前は良く分からないのですが、オオカナダモのような藻の大群落になっていて、ここに多数のイトトンボが見られます。まず、早速ムスジイトトンボの♂が出迎えてくれます。このトンボは現在相馬市、いわき市、矢吹町さらに白河市(未発表)から知られていて、決して生息地は多くありません。最近は近畿・東海地方内陸部さらに関東北部の内陸部へ分布が広がっているようで、温暖化の影響を指摘する人も多いようです。白河市や矢吹町など福島県でも同様な理由で内陸部への分布拡大が起きているのかも知れません。ただ、生息地としてはどんな池沼でも良いというわけではなく、その条件に産卵基質となるオオカナダモやコカナダモさらにアオミドロなどの水中植物や藻類が繁茂していることがあげられます。夏井川河口では多産するセスジイトトンボと混生しますが、個体数は少なく、1/5ぐらいの比率だと思います。
                    
                  河口ではベンンケイガニがちょっかいを出してくるから油断できない
                           
                個体数は少なく、多産するセスジイトトンボと紛らわしい
                     
      水面の植物に器用に止まって交尾するムスジイトトンボ、ここでは水面に降りて交尾するのが多い
      
      ムスジの産卵のはずが、どこで入れ替わったのかいつのまにかセスジに


(1)アオモンイトトンボの遺伝的多様性
 夏井川でもう1つ目につくトンボにアオモンイトトンボがあります。アオモンイトトンボはムスジイトトンボより、より浜通り地方に分布が限られるトンボで、まだ福島県内陸部での生息が確認された例はなかったと思います(調査不足だとも思いますが)。「日本のトンボ」を見る限り東北地方の北限は宮城県の石巻市・気仙沼市あたりになっています。古く「宮城県のトンボ」では1969年の記録で石巻市富士沼がありますから、当時から分布が北上している気配はありません。暖地性のアオモンイトトンボの分布が近年の温暖化にもかかわらず大挙して北上しないのはなぜか、何が作用してその種はそれ以上北上しないのか?
 
 ところで、アオモンイトトンボは広くアフリカから中東、南アジア、東南アジアそして東アジアと極めて広大な地域に分布しています(津田, 2000)。てっきりいくつかの亜種にでもわかれていると思っていましたが、今のところ Ischnura senegalensis のみのようです。 
 しかし、このほど中国の Bin Jiangら(2023) が世界各地のアオモンイトトンボにおけるミトコンドリアDNAのハプロタイプ*を調べたところ、大きく4つのグループに分けられると報告しました(ミトコンドリアDNAのハプロタイプ分析は同一種内における地域個体群の遺伝的分化(多様性)の解析に広く用いられる手法だそうです)。

    
       ミトコンドリアDNAのハプロタイプからみたアオモンイトトンボのグルーピング
                             Bin Jiang et al., (2023)より

 詳しく見てみます。世界各地約500個体を調べると51個の異なった塩基配列(ハプロタイプ)が検出できたそうです(下のハプロタイプネットワークを参照)。出現頻度でそれらを見るとアフリカ、アジア、琉球諸島そして日本の4つの大きなグループに分かれることが分かりました。アフリカ地域はハプロタイプHp_1(赤の円)1種類のみでまとまっています。これに対して、最も出現頻度が大きかったアジア大陸部のHp_3には中国・インド・東南アジア・日本等の7地域ごとの多数の塩基が混合したものが見られ、一方、日本と南西諸島(琉球列島)では、日本はただ1つのハプロタイプから成っていて、また南西諸島は大陸からの遺伝子流動を受けず、独自のハプロタイプを有することが明らかになったと報告しています。

                  
                アオモンイトトンボのハプロタイプネットワーク図                  
                      Bin Jiang et al., (2023)より
       左上の色が付いた円は個々の地域を示す。色が付いた円の大きさは個体数(出現頻度)の多さを 
       示し、多ければ大きな円になる。Hap_は分析できたハプロタイプ、直線は類似するハプロタイ 
          プ間をつなぐ、数字入りの○はハプロタイプ間で起きた塩基置換回数. 

 Bin Jiangらは南アジア、東南アジア~中国に最も多くみられるハプロタイプHap_3に注目して、多様性がこれほど高くなった理由は広域に行われている稲作にあると推定しています。アオモンイトトンボはこれら地域の水田地帯に普遍的に生息していて、地域を越えた移動があるためではないかと述べています。一方、アフリカはアジアを繋ぐ地域が広大な乾燥地帯であったり、また海峡であったり地理的な障害がその移動(遺伝子流動)を妨げている可能性があると述べています。さらに、南西諸島・日本では海が遺伝子流動を妨げ、特に南西諸島では地理的な隔離によって独自の遺伝子構造に進化したものと推定しています。
 この研究も、前にハッチョウトンボのところでも述べた、日本のつくばにある農環研ジーンバンクのデータがあったからこそ成り立ったようなもので、彼らは中国国内でアオモントンボを集めたにすぎません。ジーンバンクはまさにその機能を大いに海外の研究者に開放していて、数多くの成果が生まれています。日本の研究者(チョウやコウチュウは結構やってる)でもこうしたグローバルな研究を行う人たちがたくさん出て、海外勢にまけない活動をしてほしいものです。一方的に利用されっぱなしては情けない。もう少し、分類やるにしても、分子生物学的な手法が使えて、知識があるなら、日本人(特にトンボに限って)も国内はもういいから、もっと世界的な視野に立った発想ができないものかと。
                      
                      夏井川で普通に見られる♂型メスとの交尾
             
                     
              獰猛なアオモンのメス、ムスジのペアに襲いかかる
                          
            本来天敵のアメンボを襲って食べるメス、すでに腹部のほとんどは食べられてしまった
                         
                        ♂型メスの産卵
                     
          
       この地域では数が少ない暗褐色のメス

          *ハプロタイプ
                     東京都医学総合研究所ホームページからの図を一部改変 

人の例:父母それぞれ1対ある対立遺伝子の塩基配列をハプロタイプ(父方の場合は赤で指した部分)と呼び、遠縁ほど塩基の組み換えが多くなる

引用文献
Archives of Insect Biochemistry and Physiology, e22015. https://doi.org/10.1002/arch.22015


 





                      










2023年12月18日月曜日

マダラヤンマ♂は繁殖地に飛来して、なぜすぐ交尾しなのか?

  これまでマダラヤンマの♂をしつこく観察していると、池に初めて飛来した後、しばらく交尾しないことが分かってきました。同時期に♀は日中、高速で飛び去る個体や夕暮れや強風時に池の周りの木々にまとわりつくように飛翔しながら小昆虫を捕食する姿が見られ、いないことはないのです。
 ♂の交尾は初めて飛来してから、年によっても違いますが10~14日後に初めて観察されるようになります。また、産卵はさらに1週間以上遅れるようです。

 ここまでは、くどいようにこのブログに書き続けてきました。今回はなぜ♂は初飛来後にすぐに♀を見つけて交尾しないのかを性成熟の面から調べてみようと思いました。
 このページは上述の内容を踏まえて先月おこなわれた日本トンボ学会において講演したものです。その後、トンボ仲間から良く内容が分からなかったとか、出席していないので要旨を送ってほしいという要望があったので、このブログで内容をお伝えして参考にしていただけたらと思います。いろいろ意見をもらえたら有難いです。
                                             

 まず、発生時期全般の♂の行動(飛翔行動)が、時期ごとに違いがあるのかを調べました。
 上図のように、問題にしている時期をで示しました。この時期の♂は繁殖場所へ飛来してホバリングや探雌飛翔を行います。また♂の体は外見上、生殖期の個体と全く色彩や体の硬さなどに違いはありません。まあ、一般的に言って成熟♂であるとするのが妥当だと思います。でも交尾は観察されません。なぜだろう?と。
 そこでまず♂の飛翔行動を調べました。特に、初飛来直後の飛翔行動は他の時期に比べて際立った特徴があるのかを見てみました。発生期間を4つに区切って♂の飛翔個体を、開放水域とその奥のヨシ原内部の区域に分けて、それぞれを飛んだ延個体数を記録しました。開放水域は奥行き約5m×長さ20mの広さ、ヨシ原の方は繁殖域の奥で、同じ広さを対象にしました)。観察は観察域が一望にできる池の堤からおこないました。
                    
                   (図をクイックするとやや鮮明になります)
 結果は上のグラフのとおりです。飛来直後は早朝に開放水域(以下水域)に出て活発にホバリングを交えて飛翔します。しかし、短時間で水域から姿を消し、その後夕方まで姿を現わしません。ですが、ヨシ原の中には散発的に飛翔する姿がかなり認められ、それは交尾が観察される前まで続きます。ところが生殖活動が開始されると劇的に水域で活動する個体が増え、同時にヨシ原内部での活動も増加します。しかしその後観察される個体数は日ごとに急激に減少して、メスが産卵盛期をむかえるころには水域、ヨシ原共にわずかな個体数しかみることが出来なくなります。
                  (図をクイックするとやや鮮明になります)

 どうも水域とヨシ原での活動数には大きな違いがあって(上のグラフ)、このトンボはヨシ原に強く依存する種類だという印象を強く持ちました。日中の大半はヨシ原内部が生息域であることが分かります。
 水域ではそこで縄張り飛翔する♂が侵入してくる♂を排除します。追い出された♂の多くはヨシ原とどまるために、ヨシ原での個体数が増えるというのはあたり前ではないか。という考えも当然でて来ると思います。しかしヨシ原の上でも多くの個体がホバリングを交えた活発な行動が観察され、さらに水域に縄張り♂が居ない時でも、それらは水域に出てこないことが多いのです。また縄張り♂もその縄張り継続時間は非常に短く、すぐにヨシ原内部に移動することなどから、交尾、産卵をも含む主な生活圏はヨシ原なのではないかと強く思います。
 一方、図鑑や解説書にはマダラヤンマは朝夕に活動して、特に昼前後に活動が不活発になる。そしてその理由は日中の気温が高温であるからだろうと書いてあるものがあります。本当にそうか?上の4つのグラフを見ると、時期によって多少は異なりますが大体11:00~ 14:00時は不活発に、特に水域ではより姿が見れなくなることが分かりました。しかしグラフからはある気温以上になると活動が抑えられるというような影響は認められず、昼間に飛ばなくなるのは、本種にもともと備わっている性質なんだろうと思います。
 また良く、マダラヤンマの採集や撮影をやっている人の間で、本種は朝何時から飛び始める等々が話題になります。これまでのデータで見てみると、以下のようになります。
                     

 これを見る限り、多くの人が体験しているとおり、飛び始めは大体20℃前後だと言え、当然当日の気温が寒ければ飛翔開始時刻は遅れるでしょう。高ければ早まるというわけです。季節の推移と共に低温でも飛ぶようになると思っていたのですが、意外でした。

 さてここからが本題です。♂の飛び方の特徴は、飛来直後から交尾前までの期間は早朝2~2時間半ぐらいしか飛ばず、以後夕方まで全く水域を飛びません。この様に他の時期の行動とは異なることがわかりましたので、この時期の♂は見かけは成熟しているのですが、性的に成熟していないのでは?という疑いを持ちました。
 そこで以下の方法でそれを探ろうとしました。

1 体重を測ってみる
 この時期の♂は日々、ホバリングや飛翔することで飛翔筋を鍛錬し、同時に生殖細胞を成 
 熟させるのでは?飛翔筋の発達は全体重の相当量を占めるので、もし性成熟が必要である 
 なら飛翔によって筋量の増加が見られるのではないでしょうか。
                    

 上のグラフが結果です。明らかに何か言えるものではないように思います。ただ今年も昨年も9月10日前後が交尾開始日になりますので、その前後のバラツキ度を見ると交尾前はその幅が大きいように思います。しかし結論として両年とも、時期と共に体重が増えるとは言えないことがわかりました。

2 ゲニタリア内における精子の確認
 成熟して交尾していればゲニタリア内に精子が残っているものと考えて、下の図の赤矢印
 の時期の♂を捕えて解剖して調べました。
                    
                    
 マダラヤンマのゲニタリアはヤンマ科の中でもオーソドックな形をしていて、全部で4節から成っています。移精行為によって腹部第9節の生殖弁から送られる精子がゲニタリア第2節と第3節の間にある精子取り入れ口から基部の第1節内の貯精室に送られます。第1節内には巨大な収縮する筋肉組織が収められていて、それが収縮することによって第1節内の大量の体液(多分?)が貯精室内の精子を一気に第4節の精子放出口まで運ぶのです。
 そこで第1節を切断して精子の有無を調べました。性的に未熟なら精子は無いと考えたのです。
 
3 精巣の発達度
 これが最も性成熟を確認するには確実だろうと考え、上述の通り時期を3つに分けてそれぞ
 れの時期の本種を採集して解剖してみました。

 解剖にはコツがあって、百均で買った薄いプラ容器に同じく百均で買ったハンコ用のゴム下敷きを敷いて、水を張ります(保存しないから水道水で良い)。次に腹部を適当な位置で切断します。そして腹部第10節を解剖ばさみで外皮だけを切るように切れ目を入れて消化管をゆっくり引き抜きます。それから背開きにして外皮を昆虫針で固定して観察するのです。 
                     
                       (図をクイックするとやや鮮明になります) 
                
 精巣(上図)でつくられた精子は輸精管を通って貯精嚢に送られてます。さらに生殖弁(孔)から移精行為によってゲニタリア(副生殖器)に移されます。私はトンボの精子をまだ見たことがありませんでしたので、これだと分かるまで少し時間がかかりました。ルリボシヤンマ属の精子は典型的な精子の集まり、精子束と呼ばれる丸い塊になることが知られています。文献によればこの精子束は精巣の出口でようやくそれらしい形になって、さらに細く絞られた輸精管を通ります。この時精子束は1列になって通ることで丸い精子束になると言われています。さらにこの部位でなんらかの分泌物が生殖腺から分泌され、精子の発育にかかわるのだとも推測されています。  
            
                
 貯精嚢をうっかり傷つけると精子束がポロポロとこぼれ落ちてしまいます。精子束を透過型の顕微鏡で覗くと相当数の精子のヘッド部分が20程度のクリップで固定されていることが分かります。これらのクリップは苛性ソーダの希釈液で壊されて精子はバラバラに遊離した状態になります。
                     
        アルカリ溶液でバラバラになった精子束 精子が1本1本遊離している

 精子束を観察していると、生殖期に採集した個体のそれは、なにやら粘度のある物質に包まれ、お互いにくっついて、精子束の大きな塊を作ることが分かりました。それらは貯精嚢末端部に多く見られ、移精の際はこのまま塊としてゲニタリア第1節に送り込まれるものと思われます。

 文献を調べると、さすがにやってますね、今まで観察してきたことがさらに詳しく調査されていました。 Åbro (2004) によればこの粘着物質で精子束が固まりとなることについて、これらはまだ発育途中の精子で、粘着物質から養分を得ているとされていました。さらに♀と交尾しても精子はまだ未熟で、しばらく精子は♀の交尾嚢内で発育する必要であって、♀の交尾嚢内でも粘着物質からの養分が精子に供給されるとあります。そしてある時期に達すると♀の生殖腺からの分泌液によって粘着物質やクリップが溶かされて精子が完全に遊離状態になって受精につかわれるようになるという驚く内容が記されていました。ノルウェーのベルゲン大学にはこういうの専門に研究する施設があるというのが凄いですねー。こういう研究に金出せるノルウェーの研究体制っていうのは、やっぱり北海油田の恩恵の結果なのだろうか?...余計なこと考えちゃいます。

                     
                  粘着物質によって、塊となった精子束群
 
 それで、2,3の結果を表にまとめてみました。
 結果的にはゲニタリア内部の精子(精子束)の有無はどの時期でも、1個の精子もその痕跡すら確認することは出来ませんでした。交尾態になった時に瞬時に移精を行っている
(どなたか確認された方いますか?)ためか、通常ホバリングしている♂を採ってもゲニタリア内には精子は無いのかも知れません。しかし生殖期の♂にも全く確認できなかったことはどういう事でしょうか?ただ解剖していた時にこの第1節からはおびただしい体液が流れ出してびっくりしました。この大量の体液によって、1個の精子束も残らないような高圧力のフラッシュイングをおこなって精子をひとつ残らず洗い流しているとでもいうのでしょうか。
                   
                        
(図をクイックするとやや鮮明になります)
            
 精巣の大きさ・太さは8月30日ものは2個体とも発達は悪く、それ以外は十分な精子束量を確保していました。また、精子束の集団化現象は生殖期に入っている9月14日の2個体のみに見られました。
 このことから、初飛来から交尾期(生殖期)前までは表面上、♂は成熟していると考えられましたが、性的にはまだ未熟であって、この間のヨシ原での活動が性的成熟に必要である可能性が高いと考えられました。
 ただ、これはサンプル数が少なく、もう少し調査しないと結論は出せません。しかし来期、またマダラヤンマを採取して解剖する意欲はもうありません。この項目はこれで終了したいと思います。今回の調査から、特に海外の文献からマダラヤンマの♀がさらに遅れて産卵する理由も少し理解できたような気がします。交尾して受け取った精子がまだ未熟で、成熟して遊離するには時間がかかるとされたことは、マダラヤンマでも同じメカニズムで精子が成熟する結果だという可能性が非常に高くなりました。
 さらにオオルリボシヤンマの産卵についても、♂が出現してから2週間も遅れることは、これも精子の成熟期間が影響しているのかも知れません。どうもルリボシヤンマ属には共通した性質が存在するのかも知れません。苦戦しているオオルリボシヤンマの交尾については♂の性成熟度と♀体内の精子成熟度について来期調査したいと思います。

引用文献
A. Åbro (2004) Structure and function of the male sperm ducts
       and femalesperm-storage organs in Aeshna juncea (L.) (Anisoptera:     
       Aeshnidae). Odonatologica 33(1): 1-10.
 






                  





                    












































































































































































































































































2023年12月5日火曜日

オツネントンボはどこに行った?(アマゴイルリトンボ)

  12月5日、ここ数日、朝方は-5~0℃と冷え込んで、霜も降りました。オツネントンボを観察しやすいように集まって越冬している場所(1.4m×1m)に目印を付けて、その中の数を現地に行った時数えてみました(厳密でなく適当に)。11月27日の夕方は7頭のオツネントンボがササの根際に止まっていました。そして今日、わずか2頭しか確認できません。落ち葉にもぐったかと思って、落ち葉をひっくり返してもみましたが結局、他はどこに行ったのか分かりませんでした。周囲も探しましたが、あれほどいたオツネンはどこかに行ってしまったようです。このところ続いた低温では日中も4℃ぐらいしか上がらず、飛ぶことは出来ないように思います。どこに行ったんだろ?
 また、また、例の得意の不思議が始まりました。いやだな―、こういうのに付き合うのは。
                    
         早朝まだ生き残っているアキアカネの前胸に残る霜の痕、ようやく融け出した

 気分転換に、今年撮っていた写真を見てみました。肝心な時期にほとんどオオルリボシヤンマに翻弄され、目立った活動ができませんでした。写真を見ていて、あー、こんなことやってたんだと、完全に忘れていたシーンがでてきて自分でビックリしているほどです。その中からアマゴイルリトンボ。以前用水路のアマゴイルリトンボを紹介したことがありました。U字溝の幅が30cmほどなので、撮影が体勢的にきつく避けていましたが、思い切って挑戦しました。
                       
    
                                                   アマゴイルリトンボが見られる溜池
                          
            農道の右手、斜面との境に用水路があってくさ草が覆いかぶさっている
                          
 用水路の下流部から上流へ覆いかぶさる草を除けて進むと、まずモノサシトンボに出会う
                          
         しばらく覆いかぶさる草をかき分けていくと、いました居ました、若いカップルです
                    
             完全なブッシュの中、成熟したカップルが居ました。個体数は多くありません
                           
    モノサシと向かい合って、どう思っているのでしょうね。陽の射す場所には決して出てきません

 アマゴイルリトンボは福島県ではさほど珍しいトンボという感じはせず、各地に分布し、しかも個体数が非常に多いのが特長として挙げられます。ある意味で福島県を代表するトンボなのかも知れません。猪苗代湖周辺には広く本種が分布していて、その生息環境は農業用水を通じて広がったという考えを強く持たせます。基本的には以前のブログにおいて、南会津・只見一帯の生息状況で述べたものと同じだと言えます。戦後、食料増産のために入植と開田事業が盛んに行われ、猪苗代湖周辺でも湿地帯に新しい水田が作られました。多分、この時は本種にとっても生存が最も危ぶまれた時期だったのではないかと思います。その後、高度成長期を経て、離農が進み、当時造成された多くの田んぼは荒廃して、また湿地にもどりました。網の目のように作られた用水路は役目を終え、あらたに生き物をはぐくむ水辺となりつつあります。アマゴイルリトンボはこうした環境にむしろ適応して分布を広げつつあるのだと考えられます。


2023年11月26日日曜日

平地のオツネントンボの越冬

 

      落日をむかえるいつもの観察地、右の斜面にオツネントンボが集まっている 11/23 須賀川市

 以前標高700mに位置する山間部におけるオツネントンボの越冬を観察して、このブログに概要を載せました。それらの結果から、越冬には温度よりも太陽高度の位置によって越冬時期が決まるのではないかと予想を立てました。
 それから20年、確実に温暖になって本種の越冬も変わったのではないかと思っていました。11月アキアカネを観察する須賀川市の水田地帯の雑木林には多くのオツネントンボが生息しているのが気になっていました。山間地に登らず、低地での個体群はどのように越冬するのか。山間地だと毎年11月10日以前が越冬開始時期となりますが、どうも低地だとかなり遅くなることが分かりました。そうすると越冬開始時期は以前予想した太陽高度によるものではない可能性が出てきました。うーむむむ。
 大体コーなります。勝手に自身で描いた予想は見事にはずれることが多いのです。そんなに甘く、単純じゃねーぞ、と。
 観察当日の23日は異常に暖かく、当地では最高気温が18℃を記録して、オツネントンボ、オオアオイトトンボ、ナツアカネそしてアキアカネが午前中活発に活動していました。普通ならほとんどトンボは見ない時期なんですが。午後3時すぎになると、オツネントンボは陽に当たる雑木林の縁にある農道の斜面にどんどん集まります。さらに3時30分あたりから斜面の小枝に止まって静止状態を保つようになって、全く活動しなくなります。気温は14℃で結構高めです。どうやらこのままの状態で夜を越し、樹上に上がって眠ることはしないようです。
 このまま、地面近くの植物体につかまったまま、越冬に入るのでしょうか?だとすればオランダなんかで報告されている越冬態と変わらないという事になります。
  
                                           まだまだ元気なナツアカネ、だいぶ老熟している 
                     
          日中は明るい南向きの斜面で小昆虫を捕食したりしながら過ごす
                     
                夕日を受けて静止する♂、このまま夜を迎える

 26日、この日は午前中は晴れでしたが、朝の気温が氷点下まで下がりました。これで、お陀仏となったトンボも多かろうと、いつもの観察地に出かけてみました。時間は9時半です。気温は6℃、現地に着くと何とアキアカネが交尾してます。こんな低温でも盛んに雌雄が飛び回っています。敏感でカメラで寄るとすぐに飛び立ちます。多くは雑木林の南側に作られた農道の法面に止まっています。10:00には気温は7℃になりましたが、こんな低温でもアキアカネはペアとなってどこかに飛んでいきます。ずいぶん低温には耐性があるようです。
                      
     気温6℃のなか、連結態のアキアカネ、交尾していたが驚かせてしまい、交尾を解いてしまった。

      この時期でも11時頃(気温8℃)になると♂は産卵に来る♀を捕えようと水田に飛来します

 オツネントンボは?と、法面を探しますが全く飛びません。よくよく探すと、刈り払われたササや小灌木の根元にしがみついている個体を発見しました。慣れて来るとそこかしこに厳しい夜を越したオツネントンボが静止しているのを確認することが出来ました。この温度では飛翔することは無いのですが、気配を感ずると止まっている枝の裏側に体を隠します。寒さで動けないわけではないのです。結構敏感で、すぐ裏側にまわりこんでしまいます。その動きはハゴロモ類やヨコバイ類のようです。「お前らトンボだよなと、」言いたくなります。
 こうなると、平地での越冬はこうした日当たりのいい斜面にある植物体の地際で越冬するのでしょうか?まだ、本種の越冬態は朽木や岩の割れ目に入り込んで越冬するイメージが強く、このような観察は意外でした。もう気候は冬になっていますから、これをもってオツネントンボの越冬態だとすべきなのでしょうか、悩みますねえ。もう少し観察を続ける必要があるのかないのか、分かんねーなあ😕
                                  

    
   どこにいるかわかりますか?

                         生息地景観
    
 つづく                                                          




                  
  
 
 









ミルンヤンマ、アオヤンマ、ネアカヨシヤンマ、そしてヤブヤンマの学名が変更になった!

(このブログはパソコンで読んでください。携帯では文字化け行づれが起こります。)  先ごろ行われた日本トンボ学会で、トンボ界を代表する若い講演者がクイズ形式で最近のトンボ事情を面白おかしく発表されました。その中にミルンヤンマの学名変更の話があったような気がしました。あまり事の重大さ...