福島県のトンボ探訪
福島県におけるトンボの写真とそれぞれの種類の興味深い生態を紹介するブログです。
2026年9月28日月曜日
マーキング法によるオオルリボシヤンマの縄張りの観察 Ⅰ
2026年9月27日日曜日
いつの間にか少なくなってしまったナツアカネ
今年も豊かに実ったお米、磐梯山も久しぶりに顔をのぞかせた 2026. 9.30
福島県の中央に位置する郡山市は明治時代に、それまで原野であった安積野に猪苗代湖から水路で水を引き、水田を開くという国内最初の大規模疎水整備事業(安積疎水)がおこなわれました。同時に士族救済として福岡県久留米藩、高知県土佐藩をはじめ多くの藩から入植が行われました。そして入植された方々と地元の血のにじむような努力によって現在、郡山市は県内最大の水田面積と生産量を誇るようになりました。
しかし、明治時代以前は平野部であるにもかかわらず、米作に必要とされる水源は溜池に頼らざるを得ませんでした。そのために郡山市から矢吹町にかけては数多くの溜池が作られています。こうした溜池の存在と広大な水田地帯はアカトンボ類の大発生地となって、毎年アキアカネの群飛はこの季節の風物詩ともいえるほどです。
さて、今年もアカトンボの季節になってきました。9 月下旬になると水田にはアキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボそしてマイコアカネが見られるようになります。残念ながら私はアカトンボへの思い入れが少なく、あまりその生態を知りません。最近アキアカネを観察するようになってきましたが、他はほとんどその生態に関心がありませんでした。
ナツアカネ 2007.9.28 会津若松市アキアカネの交尾 2026.9.23 猪苗代町
ノシメトンボの交尾 2007.9.28 会津若松市
この時期、郡山市周辺ではまだ稲刈りが始まっていません。コンバインが作業できるように水田の田面土壌を乾燥している時期なのです。したがって、水田には水が無い状態なわけで、そうなると産卵を水面におこなうアキアカネやマイコアカネは必然的にこの時期の水田に飛来して産卵しないと、私は高をくくっていました。
アキアカネの交尾 2026.8.30 猪苗代町
ノシメトンボの産卵 同上
実はまだナツアカネの写真をデジタルカメラでは撮影していませんでした。そこで今年こそはと、この時期に記憶をたどって発生地に行ってみました。正直、交尾と産卵を撮ればいいや、と楽勝気分で出かけたのです。ところがかつて多産していたナツアカネはどこにいってしまったのでしょう。行けども行けども見当たりません。郡山市周辺をあきらめて、思い切って猪苗代湖畔の水田地帯に転戦してみました。しかし、同様にその姿は全くありません。周辺を探し回りました。湖畔沿いでようやくポツポツとオスが単独で水田わきの灌木に止まっているのを見つけました。すると少し離れた水田の上を多数の連結したナツアカネが飛び回っているではありませんか!早速行ってカメラで交尾と産卵を狙います。連結個体は稲穂の上を飛び回りながら、なぜかその下に潜り込みます。しばらくすると交尾態で飛び出して近くに止まって交尾を続けます。
しばらく不思議に思いながらも交尾の写真を撮り続けていましたが、次々に飛来するペアは一向に産卵する気配がありません。そのうちアキアカネのペアが飛んで来て、水田の縁に産卵を始めました。あれれ、水あんの?とその時初めて水田には前日までの豪雨の影響で水がたっぷりと帯水していることに気が付きました。ということは、今いるナツアカネは全てアキアカネなのか?そうです!皆アキアカネでした。結構苦労して撮った交尾も全てパーアとなりました。ナツアカネだと疑いもしませんでした。どおりでオスが真っ赤でなかったわけです。
私はこれまでアキアカネが稲穂がまだある水田での産卵を見たことがありませんでした。この時期飛んでいるのは全てナツアカネだと思い込んでいました。よくよく見ればアキアカネのペアは稲穂の上をゆっくり飛んでは稲穂の下に潜り込みます。チョンチョンとメスの尾を水面に付けて田面の状態を確認しているのでした。産卵場所として納得すればすぐに飛び上がり、交尾態となって付近に止まります。また交尾を終えたペアは再び稲穂の上を飛んでいきなり稲穂の中にもぐりこんで、イネの株間に出来た水たまりに産卵するのでした。思い込みの代償は大きいもので、この日は昼からの強風で一日をダメにしてしまいました。
ナツアカネはアキアカネに比べて平野部にある区画の大きな水田(30a 以上)、用排水が完備された水田地帯には非常に少ないように思えました。今回の生息地は大規模に整備された圃場ではなく、小さな田んぼが集まった水田地帯で、すぐ近くに集落とその背後に森がありました。面積が平均 10 a の小さな24 枚の田んぼから成っていました。用水路と排水路は一緒になっていて、今では珍しい素掘りの水路でした。一部の水田にはまだ水が田面に残っていましたが、他は長靴で楽に歩ける状態でした。
同上しかし、不思議なことにナツアカネが見られるのは極限られた水田のみだったのです。さすがに気になったので、水田の特に田面の乾き具合を見てみましたが、特にどうだとは言えず、どういうことが理由で特定の水田に集まるのか分かりませんでした。
ナツアカネはアキアカネ同様にオスはメスを捕捉後、交尾した状態で飛んで近くの稲穂や地表の草などに止まって交尾を続けます。今回、2例ほどメスを捕え数分間交尾態で飛び回ったペアが空中で交尾をほどき、連結型になって産卵するのを観察しました。交尾態で飛び回るペアはオスがそうするのか、緩やかに上下にまるでメスに交尾をほどくのを促すような飛び方をしました。この様な交尾がナツアカネに頻繁に見られるのかは分かりませんが、アキアカネで私は見たことがありません。
交尾態で飛び回るペア 2026.9.26 矢吹町 同上
同上
交尾を解いて産卵モードに入ったペア 2026.9.26 矢吹町
2026年6月11日木曜日
サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri の縄張り行動
このトンボを毎日見てきて、彼らの縄張が非常に合理的な配偶システムの核として機能していることを実感しました。そしてあらためてトンボの配偶行動の面白さを知ることになりました。以下に簡単に本種の縄張行動を私なりに感じ、妄想的に考えたことをまとめてみました。でもこれは、あくまで郡山市のある湿地での観察結果です。環境や個体密度が異なれば、また違った結果になるかもしれません。
2026年5月31日日曜日
サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri の観察記 Ⅱ
縄張りで静止してメスを待つオス、これがサラサヤンマの縄張の基本だと思います
縄張内を歩くと静止していたオスが驚いてホバリングする
両者のグラフの調査間隔をそろえなかったのですが、何となくオスの活動が不活発(縄張りで活動するオスが少ない)な時間帯にメスがより多く飛来しているように見えませんか?オスの活動が活発となる3つのピークを避けるように♀が飛来している?ここには示しませんが、産卵は交尾に比べ、よりオスの活動が不活発な時に行われる傾向がありました。メスたちは縄張りの外からオスたちの様子を伺っているのでしょうか?
この湿地では産卵中のメスが雄に見つかって確保され交尾にいたることは殆んど見られず、交尾は産卵を装いながらメスが縄張内を地面低くゆっくりと飛んだ時に観察できました。でも、なかには産卵そのものが目的ではなく、明らかに自らオスに摑まることを望んで縄張りを飛ぶメスがいるように見えます。
2026年5月26日火曜日
サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri の観察記Ⅰ
注目すべき交尾率ですが、明らかに静止型が2倍高くなっていることが分かりました。これは継続時間が静止型が4倍以上も長いことが主な要因と考えられます。飛んでエネルギーを消耗するよりも、止まって楽して交尾したほうが絶対に良いと思います。飛翔型が静止型より長時間継続するなら結果は逆になったと思います。
もし、静止型縄張りのオスが外的な刺激を受けなかったとしたら、一体どのくらい長く止まっているのでしょうか?ある時間以上は我慢できなくなって、自発的に飛翔型縄張り行動に移ることはないのでしょうか?5月27日の観察はその点非常に興味のある出来事でした。この朝はどんよりした天気で、8時頃に日が射しこんできました。オスの飛来は8:30を回ってからでしたが、2オスのみが飛来してきました。片方は直ぐにメスが来て、それを捕え交尾態となって飛び去って行きました。残る1オスは縄張り内の小さな枯れ枝に止まってメスを待ちます。でもなぜか、その後メスはおろかオスも全く飛んできません。結局このオスはしきりに翅を震わせながら28分43秒も止まったままの状態でいました。
マーキング法によるオオルリボシヤンマの縄張りの観察 Ⅰ
身近なヤンマやサナエ類にマーキングを施して縄張り行動を観察できないものか?もし種によってマーキング法が有効なら、これまでの経験知とその憶測からしか言えなかった生態が、具体的な実例と数値をもってして科学的に示されることになります。 これまで人懐っこい?トンボであるムカシヤンマと...
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トンボ好きのあこがれのトンボ 福島県におけるネアカヨシヤンマとマルタンヤンマは、現在こそ多産地や記録が各地にあるなど、今ではトンボ仲間の中では普通に語られる種類となっていますが、以前はマルタンヤンマはともかく、ネアカヨシヤンマが生息しているなどと全く予想しておらず、わざ...
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いつの間にかいなくなったコバネアオイトトンボ よくよく考えてみたら、このトンボについては以前からあまり積極的に観察したことがなかったため、気が付いたらほとんどの既産地から姿を消してしまっていることに唖然としています。あれほどいた猪苗代湖畔もほとんど見ることができなくなり、赤井...
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裏磐梯長瀬川 長瀬川と言えば、秋元湖から流れ出て猪苗代湖に注ぐ河川を思い浮かべるのですが、実際には、桧原湖がその源で、中瀬沼さらに乙女沼を介して小野川湖に注ぎ、秋元湖からの流れと合流しています。この一帯は磐梯山噴火時の火山岩が厚く堆積していて、その間を縫う様に無数の流れが...