2023年3月8日水曜日

ハネビロエゾトンボ幼虫を求めて(その2)

なかなか見つからない幼虫

 中通り中央部での探索は幸先よく、しかも簡単に見つかったことからこりゃ楽勝だ、と内心ほくそ笑んでいたのですが、どっこい、そう易々と事は進みませんでした。かつて確認した産地は全てダメで、幼虫どころか生息地自体が無くなってしまった所もありました。特に最近の太陽光発電所の建設地は、本種の生息地が多いなだらかな丘陵地に作られることもあって、そうなると生き延びることはできません。
 また、福島県も他県と同様に水田の廃田が多く、本種が棲む水田用水路の維持管理ができなくなって、この時期以外には藪が酷くとても近づけないような状況になってしまった場所もあります。こうした状況を目にしていて少々消化不良ぎみになってきました。
 そこで、思い切って浜通りのかつての生息地を歩いてみることにしました。複数あるのですが、今回は浜通り北部を訪ねることにしました。

 レンズ後玉に指紋が付いてたー!水田地帯にある生息地、ほとんど傾斜のない小規模の谷戸が数多く見られる。

 ハネビロエゾトンボの生息地は中通り地方と同じく、溜池に注ぐ細流だと思います。以前は素掘りの用水路もみられましたが、今ではめっきり少なくなりました。訪れたかつての生息地はさすがに藪が混んで、シーズンに入るには苦労しそうでした。標高が20mにも満たない丘陵地にあって、アカマツ・モミさらにはヒノキの針葉樹とコナラ主体の広葉樹の混合林で覆われています。林床にはイボタの群落が見られます。その中を流れる細流は幅が1m程度で、河床は砂岩の岩盤で深く浸食されています。流れは所々で帯水となっているのですが、以前はミルンヤンマの成虫が多く見られ、中通りの一般的な生息地の状況とは異質な印象を持ちました。
       中通りの溜池と違って、周囲の林にはモミやアセビなどの植物が目立つ。

        生息地の景観。左側の斜面と湿地の境に流れがある。こんな所にホントにいるのか
                  
       所々に小さな水溜まりになっている。流水量がわずかなので、ここを掬うことにする。

細流はわずかに流れがあって、その場合は岩盤の上を流れる状態のため、やむなく淵?というか水溜まりというか、まあそんな場所を掬うことになりました。せっかく浜通りまで遠征して来たのに、この環境ではなあ。溜池の合流地点から3mの地点です。のっけからこりゃ居ねーぞ、とあきらめムードになってしまいます。案の定、何回掬ってもさっぱり何も捕れません。上流を見てもさえない流れです。帰えろコールが早くも頭の中でなり続けます。と、その時(この世界こーゆー書き方多いですよねー)期待感全く無しの網の中にミルンヤンマが2匹入いりました。あれっ?同じ場所を5, 6回掬ったけど、何もいなかったはず。ムム、さらに網で水をかき混ぜて掬うと、じゃーん!出ました、ハネビロ中齢幼虫が!やっと捕れた
 なるほど2、3回で諦めてはいけないようです!この時期は水温も低く、幼虫は流されないように根とか石の下あるいは枯れ枝などにしっかりしがみついているのでしょう。だからそれらを引っ剥がす状態で網を入れないと採れないのかも知れません。急にやる気が出てきた私は1か所で5, 6回掬うことにして上流に進みました。しかし、この流れはわずかで50mもありませんでした。結局、上流ほどほとんど何も捕れないことも分かりました。大雨が降れば河床が岩盤ですから全てが下流域まで流されてしまうのでしょう。
 帰りに未練がましく網を入れ続けて、何とか若齢幼虫1匹を捕りました。そのほか、ミルンヤンマが5匹、オニヤンマが約10くらい網に入ったでしょうか。他のトンボは全く確認できませんでした。この程度で、発生が毎年あるのでしょうか?
                   
                最上流部の流れ。環境は良さそうだが何もいない。
                          
              この先で流れは無くなる。溜池の合流点から50mの地点
                   
              持ち帰ったハネビロエゾトンボとミルンヤンマ

 
 しかし、この生息地は何というか、このような環境にもいるのなら、もっと良い場所はいくらでもありそうな気がします。これだと、とにかくこの地域の溜池に注ぐ細流ならどこにでも居そうな気がしてきます。福島県は他県に比べて水田の圃場整備事業が実施されていて、平野部はもちろん都市近郊の丘陵地においても水田の用排水路が整備されています。したがって、水田地帯に本種の生息できる環境はほとんどないように思えます。そして、唯一残されているのが溜池に注ぐ小河川なのです。特に背後に湿地を配する場所は薄暗く本種成虫の活動には最適でしょう。こうした場所はある意味で水稲栽培が継続される限り安泰なのかも知れません。
 一方、会津地方のある生息地は、河川の河川敷あるいは河川林内にできた池と池を繋ぐ流れに本種が生息しています。このケースは水田地帯の生息地とは異なりますから、いずれは調査しなくてはならないでしょう。
 
 

                   
   
 









                     

   




















































                     

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(このブログはパソコンで読んでください。携帯では文字化け行づれが起こります。)  先ごろ行われた日本トンボ学会で、トンボ界を代表する若い講演者がクイズ形式で最近のトンボ事情を面白おかしく発表されました。その中にミルンヤンマの学名変更の話があったような気がしました。あまり事の重大さ...