2021年11月20日土曜日

晩秋のアキアカネ Sympetrum frequens (Selys, 1883)

暖冬?温暖化? 

 アキアカネ Sympetrum frequens (Selys, 1883)がまだまだ活発に産卵しています。最近(いつからこうなったのかは分かりませんが)福島県中部でも、12月になっても生き残っていることが多く、明らかに生存日数が2週間ぐらい伸びていることになります。ということは、福島県ではだいたい6月下旬に羽化しますから、アキアカネって5ヶ月以上も生きているんですか?ちょっとこれはどうなのでしょう。今時点でもアキアカネの個体数は決して発生末期とは思えないほど多く、5ヶ月間の累積死亡率から考えても、個体数は相当少なくなっていなくてはならないはずです。しかしアキアカネの場合は別で、考えられないような低い死亡率で長期間乗り切ってきたとでも言うのでしょうか。本種の羽化期間は長いのですが、それにしても数があまりにも違います。何か本質的なことが隠されているような気がします。
 11月19日、今日も快晴で、久しぶりにアキアカネを撮りに須賀川市新井田に出かけました。昨晩は零下近くにまで気温が下がったのですが、どうでしょうか。
                    
    
                     
                   アキアカネを観察した雑木林と周辺の水田            

 写真の奥の雑木林がアキアカネのねぐらです。時間は9:30です。気温は12℃、アキアカネたちは次々に林の南側の日当たりの良い斜面や農道に降り来てます。すでに活発に飛翔し、雌が降りて来るとすかさず雄たちがとらえようと殺到します。空中でカップルになった雌雄はすぐに交尾態となって近くの地面に降り立ちます。数例交尾を観察しました。いずれも降りてきた雌がすぐに雄に捕捉されて交尾に至ったものです。空中で交尾態になったものの、他の雄がアタックして交尾をほどき、そのまま連結態で飛び去るカップルもありました。どうも朝ねぐらで目覚め、活動開始の直後に交尾するようです。
                     
                   農道で交尾するペア

 ここで、一つの疑問が出てきます。水田地帯のアキアカネの交尾は普通、産卵場所に連結態になったペアが飛来して、産卵場所で2,3回産卵様行動(疑似産卵ともいうようです)を行った後に、その場所が気に入った場合のみに、その周辺に降りて交尾するのを良く見ます。おかしいですね。上のように、朝すでにねぐら近くでほとんどのカップルが交尾はしているのに、またすぐに同じ雄と産卵場所で交尾するのでしょうか?
                     
                    産卵場所の水田で交尾するペア

 それと、気になるのは、連結ペアは産卵場所に飛来して、産卵様行動を行った後、ほとんどのペアは交尾・産卵をおこなわないで飛び去ってしまうことです。何が気に入らないのか不思議です。しかし、気温が高くなるにつれ今度はどこからともなく多数の個体が産卵におとずれるのです。もちろん交尾するペアも多くなりますが。さらに不思議なことに、ねぐらから産卵のために飛び立つ方向、あるいは産卵場所の水田に飛来してくる方向は皆同じ。反対方向に飛んでいくものはありません。なぜ、一定方向に皆が飛ぶのでしょう。その先には何があるのだろうと考えてしまいます。市街地のど真ん中でも、連結アキアカネの集団をしばしば観察することがありますが、全てが一定方向に飛んでいきます。いったい、これらはどこから来て、どこへ飛んでいくのだろうと。
                      
                産卵飛翔するペア. 雌の翅はボロボロで体は薄汚れている
  
              別のペア. 老熟個体の色彩は産卵初期の頃とはまるで異なる
                      
                     産卵初期の10月上旬のアキアカネ
                    
                                                          
                     産卵に勤しむペア
                             
                    雌が完全に疲れ果て飛べなくなった
                        
                      それでも雄が引き上げる

 この日、14:30になるとほとんどの個体は水田から姿を消し、雑木林のある丘陵地に戻ってきました(多分もどってきたのだろう)。林縁の日の当たる南斜面に多数の雌雄が入り混じって止まって、陽を浴びています。時折個体間の干渉で飛び上がりますが、すぐに止まります。落ち葉や地面に直接止まる個体も多いですが、枯れ木には多数の個体が集中します。15:00で15℃でした。15:20を過ぎると樹上高く飛翔する個体が出始め、それらは次第に個体数を増していきました。多くはそのまま、まだ落葉しないコナラの梢に姿を消しました。アキアカネは止まっていた場所から飛び立ち、最初ゆっくりと、ホバリング気味に周囲を飛び回ります。それは次第に飛翔範囲を広げ、さらに高度を上げてかなり高所のコナラの葉に止まりました。地上の個体が全て樹上に上がったのは15:55でした。こうしてアキアカネの一日は終わりました。
                                                                               
                               一日の終わりに日当たりの良い、 ねぐらの林縁に集まるアキアカネ. 5頭飛んでいる
                         
                   斜面の土が露出した部分に集まる      
                          
                          
枯れ木に花?10頭ぐらい集まっている

 アキアカネは日本人に最も身近なアカトンボです。しかし、その生態についてはまだまだ分からないことが多くあります。特に成虫の移動や配偶行動など解明しなくてはならないことが多々あります。
 アキアカネの行動はダイナミックな面があり、簡単にその全貌を知ることは困難でしょう。しかし、少しずつ数量的な記録を集めることが必要だと思います。ほんとにこのトンボには不思議なことが多いです。なかなか手ごわい、最も身近なトンボです。

追 12月10日、午後14:50にまだ3雄が元気に飛んでいました。気温は9℃でした。12月17日、午後14:10、気温14℃、まだ健在、数頭が生き残っていました。この場所より3.5km離れた最も近いアメダスの記録で10日から17日までの8日間を見ると、最低温度が零下だったのは6日あり、その間の平均気温は4.7℃でした。かなりアキアカネにとっては厳しい気象条件で、良く耐えるものだと思います。アキアカネの終見日なんかには感心が無かったので、今回、郡山で実際に調べてみて、こんなに遅くまで生き残こることに驚きました。


 


 







                   

ミルンヤンマ、アオヤンマ、ネアカヨシヤンマ、そしてヤブヤンマの学名が変更になった!

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