2021年4月4日日曜日

越冬トンボにも春本番(このブログはパソコンでご覧ください)

ホソミオツネントンボの越冬場所の一例

  今年は、雪が例年どおり降って、結構冬らしい冬だったと思っていましたが、オツネントンボが2月21日に郡山市の自宅庭を飛んで、ツツジの葉に止まって日光浴しているのを見ました。気温は確かに16℃となって、この時期としては暖かな日でした。しかし、これまでの経験で、本種がこの時期に庭先を飛ぶことなど予想もできませんでしたので、正直びっくりしました。いよいよ福島にもトンボの季節が例年よりも早く確実に近づいて来たのを感じました。

 3月29日、栃木県境に接する白河市表郷金山の低山地に、白河市未記録のムカシトンボはいるのだろうかと探しに行ってみました。白河市の和尚さんM氏から、ムカシトンボ探索のお誘いを受けていたのですが、ついフライングをしてしまいました。この日は晴で、気温も20℃をこえるほどの日和となりました。とある林道の車止めから歩いて沢沿いに登って行くと、広大なスギの伐採地が広がっています。「これじゃいねーな」と思いつつ歩いていますと、ふと、林道沿いのスギの木立にそってオツネントンボが多数飛び回っているではありませんか。こんなところでも越冬しているのかと写真を撮っていましたら、何とある場所から上はほとんどがホソミオツネントンボに変わって、また、個体数の多さに驚きました。大雑把に数えてみると、約30m(歩幅で大体)に18匹のホソミオツネントンボを数えることができました。この調子で林道沿いに居るならものすごい数です。多分この地が本種の越冬地なのだと思いました。陽だまりに集まって、盛んに摂食行動を行っていました。周辺は皆伐状態で半分あきらめ気味で林道脇の小さな沢でヤゴ掬いをすると、何とムカシトンボが簡単に捕れました。白河市初記録です。このムカシトンボが生息するような沢沿いの杉林にホソミオツネントンボの越冬地があるのです、多分。当日は午後から訪れたので、後日、ホソミオツネントンボをメインに観察することにしてこの日はこの場所を後にしました。                     

                   ムカシトンボを求めて林道を進む                

              越冬イトトンボの生息地、スギ林の林床に生える灌木に多数止まっている                 

                       ササの葉に止まるオツネントンボの雌     
                     
                ホソミオツネントンボが見られる林道脇のムカシトンボが生息する荒れた沢
                     
                    捕れたムカシトンボのヤゴ

 4月3日、再び当地を訪れました。しかし、曇りで気温も低く、11時すぎまで陽が射しませんでした。この間、ホソミオツネントンボは1頭も現れませんでした。陽が射してもすぐにはスギの樹上から降りてきません。12時近くなってやっと姿を現しました。いずれも地面近くにある植物の小枝の先に止まっています。多分、地表面からの輻射熱を受けて暖かいのでしょう。しかし、驚かすとすぐにスギの樹上に上がってしまします。雄は半数以上が青みがかった色調に変わっていましたが、一方雌はわずかにほんのりと色づいた個体が混じる程度で、雌雄で性成熟度にかなり差があるように思いました。また、ほとんどが雌で、雌に比べ雄の個体数はかなり少なく感じました。

 これまで春先に本種が飛来してくる水域に、雄しか見られないことをしばしば経験していました。越冬場所で、雄が先に成熟するのであれば、雄が先に水域に飛来するのかも知れません。雌の卵巣が成熟するためには、雄より多く餌を捕食する必要があり、その分時間がかかるのだと思います。これまで本種の越冬個体(越冬色を呈した個体)を冬期間から春先に見つけたことは数えるほどしかありません。このように限られた場所に極めて多数の越冬個体を確認したことはこれまでありませんでした。ましてこんな山中で。このトンボの生態もまだまだ分からないことばかりです。              

                 ようやく気温が上って林道脇に降りてきて小枝で休む♀ 3/4/2021                   

                            やや青みがかった体色に変化してきた♂ 
                                          
           
             時折飛んで小昆虫を捕食する以外はこうやって静止している
                       
    
       成熟時の体色、比較にために 5/5/2020 大信村

                          雌はまだ越冬色の個体がほとんどだ 
        
                陽が射している方向に腹部を当てて、翅は腹部の裏に寄せることが多い?

番外編
 ここ白河市表郷(旧表郷村)はさらに南部の棚倉町や塙町と同様に、県内でも冬期間の日照時間が長いことが知られています。そのためイチゴ栽培が盛んで、とても甘く、高品質のイチゴ生産地として有名です。今回、ムカシトンボの調査で訪れた地域にはとんでもなくおいしいイチゴ生産農家が道沿いにあって、帰りにその直売所に立ち寄ってイチゴを買ってみました。値段も安く(スーパーで売られているよりはかなり安い、まあ、農家が直接箱詰めして売っている場所ですから)リーズナブルです。対応してくれた夫婦(生産者さん)はとても穏やかな方で、きっと優しくイチゴの面倒を見てらっしゃるのかなあと、その飛び切りおいしいイチゴを食べながら思いました。私はイチゴは正直どうでも良いほうなのですが、ここのイチゴはこれまで食べたことがないほどおいしく大変気に入りました。興味のある方は取り寄せてみてはいかがですか(写真参考)。
 




  








 

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