いよいよキイロヤマトンボの探索開始。
阿武隈高地は白亜紀花崗岩から形成されて、特に浸食・風化が進んだ地域と言われています。したがって、河川下流部では風化した花崗岩や片麻岩から成る砂が河床に広範囲に堆積する河川が多く、各地にキイロヤマトンボが生息しそうな河川が見られます。
夏井川はそうした河川の代表的なもので、私も1990-2000年にかなりの回数かよってナゴヤサナエやキイロヤマトンボの探索を行ってきました。しかし、特に後者のキイロヤマトンボについては全くその生息の痕跡すらつかめないでいました。ところが2021年に斎藤舜貴さんによって中流域で複数が12-Ⅶ-2021に採集されました(斎藤、2022, Tombo 64: 45)。早速、斎藤さんの御厚意でに採集地点を教えていただき、翌年の春に出かけてみました。ところが、現地に行って見てびっくり、生息地は数年前に起きた台風による大氾濫の対策として実施されている大規模河川改修で完全に消失していました。
あーあ、もーだめだ、何でこーなる!結局、キイロヤマトンボはその後、また新たな場所で採集され、現在も福島県ではほそぼそ?と生きながらえているようです。今回は河川を変えて探索の範囲を広げてみました。
さらに驚いたのはメスの産卵です。いきなり産卵水域に水面すれすれに飛来して飛び回ったかと思うと、岸部のヤナギの葉やツルヨシの葉などに止まって、卵塊を作り始めました。最初はホンサナエもいるのかと思いましたが、確認すると間違いなくアオサナエです。卵塊を作ったメスは河川中央部に飛んでいき、水面から高さ5、60cmの普段は見られないような高さでホバリングしながら卵塊を落下させました。産卵は計6回観察しましたが、いずれも同様の行動でした。アオサナエが岸部に静止して卵塊を作る事を初めて見ました。
あいにく距離が離れすぎて300mmのズームレンズではまともな写真になりませんでしたが、参考のためにこんなことを観察したということでアップします。オスの飛翔行動は8時をすぎると全く見られなくなりました。産卵は9時以降観察できなくなりました。
なお、この観察地では残念ながらキイロヤマの飛翔は確認できませんでした。コヤマ(多分)が1オスのみが飛んでいきました。転戦です。
アオサナエが早朝飛び回る河川の景観、画面中央部の川面を飛翔する川面に倒れ掛かるタケの枝先に止まるオス(画面中央)
朝日を浴びながら中央部分の川面を飛翔するオス
同
長時間中央部を飛翔し続けるオス
中央部で産卵するメス
産卵を終え、尾端を水面に付け飛び去る寸前のメス
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