2023年7月2日日曜日

キイロヤマトンボやーい!

 いよいよキイロヤマトンボの探索開始。

 阿武隈高地は白亜紀花崗岩から形成されて、特に浸食・風化が進んだ地域と言われています。したがって、河川下流部では風化した花崗岩や片麻岩から成る砂が河床に広範囲に堆積する河川が多く、各地にキイロヤマトンボが生息しそうな河川が見られます。

 夏井川はそうした河川の代表的なもので、私も1990-2000年にかなりの回数かよってナゴヤサナエやキイロヤマトンボの探索を行ってきました。しかし、特に後者のキイロヤマトンボについては全くその生息の痕跡すらつかめないでいました。ところが2021年に斎藤舜貴さんによって中流域で複数が12-Ⅶ-2021に採集されました(斎藤、2022, Tombo 64: 45)。早速、斎藤さんの御厚意でに採集地点を教えていただき、翌年の春に出かけてみました。ところが、現地に行って見てびっくり、生息地は数年前に起きた台風による大氾濫の対策として実施されている大規模河川改修で完全に消失していました。


                 あーあ、もーだめだ、何でこーなる!

 結局、キイロヤマトンボはその後、また新たな場所で採集され、現在も福島県ではほそぼそ?と生きながらえているようです。今回は河川を変えて探索の範囲を広げてみました。       

どうしてアオサナエなの!                                
 かつて茨城県内の生息地でかなり本種の生態を見てきたため、その時の記憶を基に朝6時に候補の河川中流域に行って見ました。6時10分、すると川面中央部をキイロヤマトンボが飛びまわりました。複数現れたようです。何だ簡単に見つかったなと拍子抜けしてしまいました。キイロヤマが近くまで飛んでくるようになりました。ここで、「ムムッ」と。腹部を高く上げて飛んでいるじゃないですか!飛び方も雑で、よくよく見れば、何だ!アオサナエのオスじゃないか。急に血圧が低下していくのを感じました。
 この川は幅が30m以上あって、岸部に砂地は無く一方は竹林、一方はヤナギ類の灌木帯となっています。典型的なキイロヤマやナゴヤサナエの生息環境です。まあ、アオサナエがいてもそれはかまわないのですが。何でよりによって今ここで!しばらく虚脱してボーっと見ていると、何とこのアオサナエたちは、延々と10分以上も中央部を全く止まらず、まるでミヤマサナエのオスように飛び回ったのです。飛翔範囲は中央部に限って15m×30mぐらいでしょうか。帰宅後で調べてみると、アオサナエのこうしたオスの飛翔は特に夕刻に良く観察されるとのことらしいのですが、早朝の飛翔は初めて見ました。

 そういえば以前、白河市の大きな溜池(水草は全くない)で早朝、アオサナエのオスが水面上を長時間ホバリングしているのを見たことがありました。さらに時間は多分9時~10時にかけてだと思いますが、同じ溜池で、複数のアオサナエが溜池中央部を水面上低く、3,4分飛び続けていたことを報告(Aeschna, 29:26-27)したことをハタッと思い出しました。この場合も今回の河川での飛翔と同じく、尾端を上げて水面低くジグザクに直進しては方向を変え、中央部だけを飛翔しました。実際に見たことはありませんが、多分、湖を生息場所とする場合は同じようなオスの飛翔がおこなわれるのかも知れません。

 さらに驚いたのはメスの産卵です。いきなり産卵水域に水面すれすれに飛来して飛び回ったかと思うと、岸部のヤナギの葉やツルヨシの葉などに止まって、卵塊を作り始めました。最初はホンサナエもいるのかと思いましたが、確認すると間違いなくアオサナエです。卵塊を作ったメスは河川中央部に飛んでいき、水面から高さ5、60cmの普段は見られないような高さでホバリングしながら卵塊を落下させました。産卵は計6回観察しましたが、いずれも同様の行動でした。アオサナエが岸部に静止して卵塊を作る事を初めて見ました。

 あいにく距離が離れすぎて300mmのズームレンズではまともな写真になりませんでしたが、参考のためにこんなことを観察したということでアップします。オスの飛翔行動は8時をすぎると全く見られなくなりました。産卵は9時以降観察できなくなりました。

 なお、この観察地では残念ながらキイロヤマの飛翔は確認できませんでした。コヤマ(多分)が1オスのみが飛んでいきました。転戦です。          

           アオサナエが早朝飛び回る河川の景観、画面中央部の川面を飛翔する               

              川面に倒れ掛かるタケの枝先に止まるオス(画面中央)   

                    朝日を浴びながら中央部分の川面を飛翔するオス              

                           同          

                      長時間中央部を飛翔し続けるオス      

                       中央部で産卵するメス
 
                  産卵を終え、尾端を水面に付け飛び去る寸前のメス



 


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