2024年8月6日火曜日

オオルリボシヤンマの生態(7月下旬~8月初旬)

♂の日周活動(行動) 
 現在、成虫の行動を継続観察しています。昨年の疑問点などを中心に調べていますが、未だ最終的な目的、即ちいつどこで交尾するのかについては糸口すら見えていません😔
 
 8月2日(成熟した個体が最初に池に戻った日から10日目に当たります。)は黎明時の飛翔が4時半過ぎに終了しました。その後パタリと姿を消し、再び池の上に複数の♂が飛来して縄張り飛翔を始めたのは1時間後の5時30分過ぎでした。調査地には5つの池が棚状に連続していて、時間の経過とともに全ての池にそれぞれ1~3頭が占有するようになりました。さらに6時を回るとスギの樹冠部で活発に活動する個体が認められました。この頃になると、池の上でも先住♂に追い出される新規侵入♂が出始め、7時前になると侵入する♂の個体数が増加し激しいバトルが繰り広げられました。勝者は明確ではありませんが、先住♂が縄張りを維持し続けたものと思われました。

 一方、追い出された♂は次第に池の周辺部(林縁や林道上)の一定の空間を占有するようになりますが、時折池の開放水面への侵入を繰り返します。私の思い入れが強いのかも知れませんが、追い出されて林縁部をホバリングを交えながら旋回飛翔する♂を見ていると、何か人間や犬に見られるような感情をトンボは持っているように感じます。激しく追い出された♂の表情(こういう表現が良いかわかりませんが)はかなりの精神的ダメージを受けたみたいで、占有♂が接近してくると、スーと距離をとり目を合わせないような仕草をします。また、池に侵入したいのだけれど、なかなか決心が付かず、躊躇しているような仕草を見せる♂もいるのです。
 黎明時の飛翔終了後から黄昏飛翔がおこなわれる直前まで、池の上で占有行動を示す♂の個体数推移を見たのが下のグラフです。
                   

 縦軸の占有率とは、昨年の観察から5つの池で占有できる最大個体数に対する各時間の総個体数の割合です。私はこれまで漠然と、そのときどきでオオルリボシヤンマの生態を見てきて、本種の習性・生態はこんなものだとしていた概念が、実は♂の日周行動1つを取っても見ても、何一つ具体的なことは分かっていなかったことに気が付きました。
 本種はマダラヤンマと同様に昼にかけて活動が低下し、午前と午後に明瞭な2つの活動ピークをもつこともわかりました。また黎明飛翔終了後と黄昏飛翔が始まる直前では、池での活動が低調になることも分かりました。
 しかしこのグラフからは各池での占有♂と新規侵入♂の闘争の実態・程度が分かりません。ほぼ同時にそれぞれの池での闘争程度を知ることは不可能なので、時間ごとに間接的に池周辺で待機する♂の個体数を数えて、この値で池を巡る♂同士の闘争程度を評価することにしました。

8月9日投稿                                                         
 各池の水域に入れなくて、周辺を飛翔する♂(今ライバル♂とします)は池で占有する先住♂の数が増えるにしたがって、増加することが分かります。この♂たちは隙あらばと先住♂に闘いを挑みますが見事に追い出され、中には完膚なくまで張り倒されてしまう個体もいることは前述のとおりです。観察を続けると、8月8日の午前中にはそれまで15~20mの高さのスギ樹冠部で占有飛翔していた個体が5,6m付近まで降下して旋回飛翔しているのを確認しました。そしてこの中の一部は積極的に池周辺で占有飛翔するライバル♂の占有域への侵入を試みます。

 このような行動から、オオルリボシヤンマにおいて、池で行われている♂同士の激しい争いは一見、無秩序に起きているように見えますが、実は階層(羽化後の日齢・成熟度)ごとに闘争が起きているらしいことが分かってきました。階層は上からスギ樹冠部、スギ中位部、林縁・林道上そして池(開放水面)の順になっていて、池に向かうほど日齢・成熟度が進んた個体となります。それぞれの階層の占有♂はその上の階層のより若い♂からの挑戦を受け、また同階層からのあぶれ♂も絶え間なく侵入してきます。それぞれの階層で占有する♂たちをはたから見てもこれは相当のプレッシャーで、消耗以外何もメリットが無いのではと思えてきます。こんなことを毎日続けていてはたまらんだろうと思います。とにかく、この時期までにメスなんかまったく飛んでこないのですから。なぜ♂たちは激しい闘争を行いながらも占有飛翔をするのか全くわかりません。
   

つづく
 

 


 
 

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