さっぱり分からん!8月14日の巻
この日の天気は非常に不安定で、現地には4時15分に着きましたが、まだほぼ真っ暗で、太陽高度が低くなって日の出が遅くなったことを実感しました。そろそろ摂食飛翔が始まるかという時、天気が霧雨になってしまい成熟虫の飛翔はありませんでした。その後霧雨が小雨になったり、突然止んで晴れてきたり、そしてまた霧雨と、目まぐるしく天気が変わりました。そんな中、オオルリボシヤンマは5時29分に池の上を複数のオスが飛翔し始めました。その後しだいに個体数を増し、それぞれの干渉が激しくなってきましたが、その間メスは現れません。8日にはメスを確認していますから、当然飛来があっても不思議ではありません。すでに多くは成熟しているはずです。
6:45に何気なく、一番下に位置する池に降りていくと、何と複数のメスが数頭のオスを従え池の中を飛び回っているではありませんか!メスは一見すると産卵に訪れているように見えますが、産卵はせず、池の縁や周囲の草むらなどに入り込んでホバリングを繰り返します。時折水面に出て、水面の植物(ジュンサイ)に止まろうとするしぐさはしますが、すぐにまた、群がるオスたちを従えてふらふらと池の中や周囲を飛び回ります。そしてなかなか池を離れようとはしません。この行動は9月などに見られる、産卵メスに対するオスの行動とは少し異なる感じがします。オスはメスの捕捉にはるかに積極的で、しばしばメスにつかみかかり団子状に草むらや水面のジュンサイの群落上に落下します。ただいずれの場合も交尾には至りませんでした。
飛来するメスは全てがオスを引き連れて池を飛び回るわけではなく、産卵行動を示すものも複数見られ、そうしたメスに対してオスは直ぐに興味を失うようでした。
複数のオスを従えたメス(もちろんオスは必死に追いかけるのですが、メスは低速で飛んで、むしろわざと追いかけさせているような気がします)は最終的にどうなるか、ここが問題なのですが、延々と林道を地上低く飛び去るものや、スギ林の中に消え去るものもあって、その後どうなるのかは全く確認できませんでした。しかし、産卵個体もようやく確認できたことから、いよいよ本格的なオオルリボシヤンマのシーズンを迎えたことには間違いなさそうです。
8月15日の観察
昨日、メスの飛来とその行動を観察することができたので、さらに詳しく観察しようと出かけてみました。前日とは違って、雨は全く降っていませんでした。アカショウビンの鳴き声を聞きながら摂食飛翔が始まるのを待ちました。4:48に池の上を飛ぶオスと林道の上を低く飛翔するオスを2,3頭を確認しました。しかし、飛翔するのはこれだけでした。この飛翔も5:00には全く見られなくなりました。
池に再び現れたのは5:35になってからでした。これまでの観察ではそれぞれの池に制空権を持てる個体数は決まっていて、陽が登るにつれ、新たなオスが次々に飛来して池に侵入しますが、多分、先住オスによってほとんど駆逐されるようです。マーキングしていないので識別は出来ないのですが、闘争して帰って来たオスは元の場所で何事もなかったように落ち着いて飛翔するので、先住オスだと思われます。新たに勝利したオスなら池を不規則にそして敏速に飛びまわりますから。
追い出されたオスの一部は再び池に隣接する林の空間や林道の決まった場所を長時間旋回していますが、だんだんその旋回する場所は池に近づいて、隙あらばという風に池への侵入を狙っています。ほとんどが成功しませんが。こうした個体を捕えてみると、まだ色彩が淡い若いオスである場合があります。
6:00をまわりさらに昨日、メスを観察した時間帯になりましたが、いっこうにメスは現れませんでした。そればかりでなく、全く予想外でしたが6:24に何と連結になったペアが上空を杉林の中へと消えていくのを見つけました。予想していたように、ついに早朝の交尾を確認できたわけです。しかし、どこでオスはメスを捕捉したのでしょう。メスなんかまったく見ていませんし。さらにこの日8:00まで、確認できたのはこのペアのみで、ついにメスは1頭も飛来しませんでした。昨日はあんなにメスが飛来して、産卵まで行ったのにです。どうも腑に落ちません。結局、また明日も行かなくてはならないのです。まさにこれを泥船状態というのでしょう。交尾個体がワーっと飛んでくれないかなあ、オオルリボシ様🙇
8月16日 こんなに奥が深いトンボだったとは、とホホの巻
というわけで、本日も行ってまいりました。台風7号ははるか西に位置していても、台風から伸びた長い腕は福島にも架かっていて、この数日天気が目まぐるしく変化しています。昨夜から朝方までは当地は雨で、早朝の摂食飛翔は当然全く飛びませんでした。それでも6:00には雨は上がり、直後の6:05にはオスが池に初飛来しました。その後6:24までにすべての池の納まる場所にそれぞれのオスが制空権を確保しました。
次はメスの飛来を待つだけです。今日こそ来るか?6:28のことです。何とマルタンヤンマのメスが20mほどの高さで真っ直ぐやってきました。やはりマルタンヤンマは良いですね。そんなことで、つい上空が気になり時々見上げていると、スギ林の樹冠部をオオルリボシヤンマが数頭飛んでいるのに気が付きました。高さは20mあると思います。
スギ樹冠部をホバリングを交えながら制空飛翔するオオルリボシヤンマのオス 6:40-7:10
それぞれ単独で、ホバリングを交えながら決まった空域を制空しているようです。他個体が接近すると激しく追い出します。良くみれば、かなりの個体がスギの樹冠部あるいは樹頭部で同様な行動をしています。これらの個体は時折、降下して池の上空に侵入することがあり、猛烈な先住オスの迎撃を受け追い払われます。
これまでの観察から、本種オオルリボシヤンマのオスは生息地の池を中心に、3つの異なる空域の中で、自らが制空することに必死になっているように思えます。まず、彼らにとって一番重要な空域は池上空で(交尾が観察されないのに重要とはおかしいのですが、まっ、トンボ屋の感覚からは自然かと)、ここは最も強いオスたちによって支配されます。池の空域を確保するには、なるべく早く飛来することが重要で、早ければ早いほど良い。8月中旬は5時20分前後には入らないと制空は難しいでしょう。次に、池上空に入ることができないオス(池のオスと闘争で敗れた者)は林道あるいは隣接する空域とスギ林上空の空域にそれぞれ自身の制空域を確保するようです。この際、林道のオスたちとの闘争で負け、林道の空域にも入ることができなかった最も弱いオスたちは(若いオスだと思います)、高所の樹冠に追いやられるのだと考えられます。
池の中で見られる闘争様式は、林道さらに樹冠部でも場所は変わるが、そのまま同じことが行われていると見ます。そして、樹冠部のオスたちは林道へ、林道のオスたちは池へと侵入・定着を常に試みているのではないでしょうか(妄想部分多し)。
このように、オスたちの行動はそんなに単純ではないことがわかってきました。相当これは手強いです。今日は結局のところ。早朝から朝9時にかけて、交尾行動を狙ったわけですが、飛来したのは1メスにすぎず、数頭のオスを引き連れて、どこかに行っちまいました。したがって、この件に関しては全く進展がありません。早朝からオスたちはいったい何を目的に活動しているのでしょうか!オオルリボシに直接聞いてやりたいです!
別タイトルへ続く
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