2025年5月14日水曜日

2025年ムカシトンボの観察記(1)

 大雪の影響は?
 今年は福島県も大雪で、ムカシトンボの発生が遅れると予想しました。観察地のいわき市三和町ではどうだったのか、5月の連休あけから現地に行ってみました。その結果、5月11日に初めて成虫の飛翔を観察しました。これは5日ぐらい例年より遅れているように思いました。
 飛翔個体を捕えてみると、外骨格はまだ完全に固まっておらず、羽化からあまり時間が経っていないことが分かります。

未熟虫の飛翔行動
 この日の朝は10℃を下回りましたが、日中は19℃程度まで気温が上りました。成虫は10時以降、気温が15℃を越えたあたりで飛翔を開始しました。これらの個体をここでは便宜上未熟虫と呼ぶことにします。未熟虫の飛翔は明らかに成熟期の個体とは異なり、摂食のための飛翔行動が主となるようです。カトリヤンマほど敏速に飛ぶわけではありませんが、林道上2mに飛び交う小昆虫を上下しながら盛んに捕食します。また、林道のわきの杉林に沿って高さ8mほどで捕食行動を示す個体が多く、地表近くを一直線に飛ぶ個体は見られませんでした。飛翔はいずれも一過性で、上空高くスギの梢に沿ってゆっくりと摂食しながら飛び去る個体もありました。
 これらの観察から未熟虫は一ケ所に留まることは無く、かなり広範囲に摂食飛翔して、成熟前期を向かえるのだと思われました。
 なお、この日はニホンカワトンボ、クロヒメサナエやダビトサナエの羽化が多く見られました。
                                                                             
                  ムカシトンボ未熟成虫が飛ぶいわき市三和町の林道


 飛翔個体数を15分ごとに数えたものをグラフに示しました。14時30分を過ぎると、飛翔可能な気温であるにもかかわらず、全く飛翔しなくなりました。飛翔も連続的には起こらず、30~45分間全く飛ばないことも多く散発的でした。また、なぜか複数の個体が同時に飛ぶことが多いようです。当然ではありますが、林道わきの渓流のウワバミソウにはまだ産卵痕はありませんでした。
 
 5月15日、朝から気温が高く、8時には15℃を越えました。この温度なら活動に問題はないのですが、飛翔が見られたもは10:18になってからで、この時の気温は18℃に達していました。飛び方は11日とは異なり、いずれもが林道上2mぐらいの高さを一直線に高速で飛びさりました。それぞれの個体は熟度が未熟から成熟にかなり進んだように思われます。観察はわずかの時間しか行えなかったため、この後、11日に見られたような摂食飛翔があったかは確認できませんでした。
                                                                                             
 5日後にあたる5月16日に再び同様の観察を行いました。上のグラフがその結果です。5日後の成虫の飛翔は明らかに初日と異なり、成熟した個体と同様な飛び方をしました。林道に沿って30cmから2mほどの高さをかなり敏速に直線的に飛翔する個体が多く、それらの多くは小昆虫を捕食するための飛翔でした。ただ一過性で非常に敏速に飛び去る個体もありました。
 初日より20倍以上の個体数が飛翔し、それらは午前中と午後に間に1時間以上ほど飛翔がほぼ絶える時があることがわかりました。なお、渓流のウワバミソウにはまだ産卵は認められませんでした。また、気温と飛翔の関係もあまりなさそうに見えました。
 いよいよ来週後半には本格的な繁殖期となって、♂のパトロールや産卵が観察されるでしょう。


つづく






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