2025年10月24日金曜日

最新の遺伝子マーカーによるトンボの高次系統分類と種の検討について

 最近の論文から

 1ヶ月ほど前にロシアの研究者から送られて来ていた新しい遺伝子マーカーを用いたトンボの系統分類の論文2編を開いて見てみました(読んでない)。DNA関連の文献はさっぱり分からないので、AI翻訳でパッと見てみたのです。
 まず、その一つThomas Schneider ら (2025) による Molecular phylogenetic analysis of the family Chlorogomphidae (Odonata, Anisoptera),  Invertebrate Systematics: 39 です。直接このブログには関係がないのですが、分子系統分類においても日々解析技術の改良が行われていて、トンボの分類学においても新しい分析方法が検討されていています。それによって新たな分類体系が構築されているということが分かりました。この論文はミナミヤンマ(現時点で南アジア~東南アジアに56種もの本種が記載されているそうで😗、本論文ではそのうちインドシナ半島をメインにした36種を対象にしています)の高次分類体系さらに系統樹から種レベルまで再検討しています。
 調査はこれまで広く使われていた核DNAのITS領域だけでなく、今回はDNAが巻き付いて保持される担体的な枠割を持ちさらに遺伝子の発現に関与するとされるヒストンH3-H4領域とミトコンドリアDNAのCOI遺伝子のバルコーディング断片領域を調べています。
 その結果、ITS、H3-H4およびCOIそれぞれの系統樹は異なるトポロジー的系統樹を示し、これらを特殊なソフトで解析したところ総括的な系統樹を作成できたとしています。
 この分子系統分析からChlorogomphidaeは1科1属から成り、これまで Chloropetalia 属およびWatanabeopetalia 属として分けられていた2属はChlorogomphus 属に再統合することを提案しています。
    そのほか種レベルを含めた変更は以下の表のとおりです。
この表のようにかなりの種で変更が示されていて、論文によれば今後さらに台湾のタイワンミナミヤンマとイリオモテミナミヤンマをはじめ数種が統合されるようなことが述べられています。さらに分析領域を変えて調べれば、かなりの種がシノニムとなって統合されていくように思えます。
 ところで、共同執筆者のロシア人の Kosterin さんは大のMacromia 属(コヤマトンボの仲間)好きで、近いうちに多分、東南アジアのMacromia 属の分子系統分類をヨーロッパの研究者と一緒にやるに違いありません。いやすでに投稿しているかも?
 世界一の東、東南アジアの Macromia 属の標本を有し、多くの種の遺伝子解析データを持っている日本は結局、データを彼らに提供するだけで何もできないのでしょうか?日本の遺伝子解析データが海外の研究者にどんどん使われて多くの興味深い論文が発表されています。残念なことです。この辺が日本の実力か。
                       





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