2026年6月11日木曜日

サラサヤンマ Sarasaeschna pryeri の縄張り行動

  トンボに友好的とか人懐っこいとかは無いのかも知れないけれど、このトンボに関してはそう言ったことが当てはまりそうな気がしてしまいます。慣れて来ると、目の前20cmほどでもホバリングしたり、積極的に私に止まりに来ます。こちらを物としては見ていないと思うんですが。そんなサラサヤンマを6 月 11 日に最後の観察をしました。一部は目が青緑色に変化してきていて、発生がいよいよ終わりかけてきたことを告げています。
                  
                   慣れて来ると長靴やズボンに止まりに来ます

 このトンボを毎日見てきて、彼らの縄張が非常に合理的な配偶システムの核として機能していることを実感しました。そしてあらためてトンボの配偶行動の面白さを知ることになりました。以下に簡単に本種の縄張行動を私なりに感じ、妄想的に考えたことをまとめてみました。でもこれは、あくまで郡山市のある湿地での観察結果です。環境や個体密度が異なれば、また違った結果になるかもしれません。

縄張りでの行動
1 最初に飛来して来るオスが先住オスになる。その多くは、これまでに先住オス(縄張りで 
 の占有行動)を経験したオスであった。
2 縄張りに侵入する新規オスは100%排除された。先住オスの迎撃戦術は侵入者に対する下
 方からの攻撃である。新規侵入者は地上1m程度の高さで侵入して来ることが多い     
 (これは経験が浅いオスで、たまに地表低く侵入して来る個体がある。これが先住オスの経
 験があるベテランだと思う)。先住オスが地上10-20cm の低い位置に止まるのは全天空的早 
 期探知と瞬時に下方から攻撃するためであろう。
3 占有目的はメスを獲得することであるが、ある時間待ち続けると、あきらめて自発的に縄
  張りを放棄する。
4 メスが産卵あるいは交尾目的に飛来する数は繁殖期前期は多く、後期は少ない。
 5  縄張りの先住オスが入れ替わるのは交尾した時と、自発的な縄張り放棄の2つの場合に限ら
 れた。

サテライトの行動
 ここでは湿地内の縄張りの外側にあるやや乾燥した草原がサテライトが活動する場だと考えられれます。
1  サテライトが活動する場所は、湿地内部の縄張りに侵入するオスの数より数倍多い。           
2  サテライトは滞在できる時間が短かい。理由は侵入オスと戦っている隙に、新たなオスが入り込んで占有者となることがしばしば起こる。また、ホバリング警戒時間が長くなり、逆に侵入オスによる低い位置からアタックを受けやすくなること、サテライトが活動する場所は交尾が多いため占有オスの入れ変えが頻繁に起きる。
3  サテライトが活動する場所に飛来するメスは湿地内部の縄張りよりも数倍多い。
4  サテライトは湿地内部の縄張りに移動していく個体が見られ、縄張りに先住オスがいる場合は排除され、不在の場合は縄張りを占有できる。
5 サテライトが活動する場から排除された個体は、再び飛来してその場を占有することがある。

                   
        水性ペイントでマーキングしたオス、いやがりもせず何もなかったかのように枯れ枝に止まる
                     
                 マーキングされても平気で、侵入オスを蹴散らしていく
                     
        オスは止まっているメスに気づかず、オスがホバリングしている下で産卵していることも多い

 以上のようなことがサラサヤンマの縄張行動(配偶行動)には起きているという事が分かりました。もちろん推察の部分もあります。この発生地はなだらかな丘陵地の谷部分にあって、谷に沿って複数の沼があります。同じ様な湿地が各沼の上流部にあって、サラサヤンマはこれらの湿地をダイナミックに移動して生活しているのだと思います。まだまだ分からないことばかりです。
 日暮れ近くなって湿地を離れるサラサヤンマは一旦周囲を確認するかの如く、緩やかに旋回したかと思うと、スピードを上げ、ハンノキ林を越えてみるみる空高く飛んで行きます。地上に残された私は途端に喪失感を覚え、ただ茫然と彼らの姿を眼で追うのでした。
 
                      
                 










オオルリボシヤンマの縄張行動 Ⅱ

  もういい加減、オオルリボシヤンマから離れたいというのが本音です。しかし、知れば知るほど不思議なトンボだということに魅かれ、また、ついつい山を越え、正直見たくもない沼へ車を向かわせてしまうのです。  今年はマーキングした♂を目印にこれまで、多分そうじゃないかな あ 、と予想でし...