2025年6月14日土曜日

2025年ムカシトンボの観察記(3)

今期最後の観察
                     
                    観察地の景観
              
                     
                   ムカシトンボの産卵域
                         
                                
                                                           白い縁紋に、ン?結構成熟しているのに。ここはほとんど透明型 

 郡山市熱海町の生息地はいわき市三和町のそれに比べ、成虫の出現が年によっても異なりますが、7~10日ほど遅れます。これまでに示した通り、三和町の成虫の活動期は時期的な低温の影響が行動を抑制していて、おおむね14℃あたりが飛翔可能な最低温度になると思われました。一方、熱海町ではさすがに日の出と共に気温の上昇が著しく、すでに7時には14℃を上回って、成虫の活動帯の気温は三和町を大きく上回っているのです。つまり熱海町では成虫の活動を抑制する14℃の温度は存在しないのです。
 これまで三和町で林道を飛ぶ個体数を羽化直後、未熟期そして成熟期に分けて丸1日、一定時間ごとに調べてきました。今回は熱海町で同様に成熟期の飛翔状況を調べてみました。
                      

 観察時間ごとの個体数を棒グラフにしました。三和町が上、熱海町が下です。細かいとこはさておいて個体数をみると、三和町における活動は主に午前中で、熱海町は午後に多いことが分かります。三和町でも夕方飛んで摂食する個体がありますが、どんどん気温が下がり、たちまち14℃を割って飛べなくなってしまいます。一方の熱海町では夕刻でも気温が17℃以上あり多数の飛翔個体が観察され、一部では摂食に混じって交尾も見られます。お昼の時間帯の活動は両区共に低調になるようです。
 このように同じ福島県内でも生息地の環境によって成虫の飛び方が変わってくることがわかりました。九州から北海道まで、さらに標高数十mから2000mまでと極めて広範囲に生息するムカシトンボは、それぞれの地域で飛び方が異なっているものと想像します。高山や海岸に近い生息地ではどのような飛び方をするのか、一度見てみたいものです。
 6月13日、熱海町で最後の観察を行いました。ムカシトンボはほとんど飛びません。昼前に数頭が飛翔しましたが、内1頭はこれまでムカシトンボでは見たことのない、エゾトンボのような摂食飛翔をおこないました。こんなこともあるもんだと見ていますと、なんだサラサヤンマじゃねーの、と。しばらくするとムカシトンボがスーっと飛んできたかと思うと上空を旋回していたサラサが猛烈な勢いでアタック、ムカシトンボは追尾されながら林の中に逃げていきました。いよいよこの地でも新旧交代となったようです。
                     
                林道上で方向転換するムカシトンボ♂
                          
                      林道上を占拠したサラサヤンマ
                          
                  





















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