2025年8月21日木曜日

オオルリボシヤンマ Aeshna crenata から見たトンボの性成熟を考える (2)

 ♀の場合
 ♀は♂に遅れて20日後に池に飛来して産卵を始めました。捕えた個体を解剖していて最初に思ったというか、あれ?と手が止まったのですが、何だかやけに卵巣が小さいのです。と言うよりまだ未発達状態のようにみえたのです。しかし、交尾嚢には精子が入っているようでした。
                   
           真中の上部分の白い塊が交尾嚢、そこに繋がる2本の黄色の細長いものが卵巣


    卵は通常の大きさに育っていますが、まだ薄黄色の透明でまだ未熟状態です。初飛来7日後の産卵個体の交尾嚢を見てみます。精子は塊となっているようで、さらに詳しく見ると精子束同士が何らかの物質で互いに結合しあっているようで、まだこの時期においても精子は遊離状態になっていないことがわかります。では、産卵がおこなわれているのはどう説明できるのでしょうか?交尾嚢内の末端にある精子束が産卵時に少しずつ♀が放出する分泌物で精子を束ねているクリップが溶けて遊離精子に変化するのでしょうか。しかしその可能性は低いと思います。
 この時期の♀は本当に卵を産んでいるのでしょうか?あるいは故意に無精卵を産むのでしょうか?
 段々核心に近づいて来たように思いますが、まだまだ謎のオンパレードが続きそうです。

                  初飛来後7日目の♀の交尾嚢とその中身、右下が交尾嚢の外皮、中心が精子の塊、精子束の粒々が見える

                透過式顕微鏡だとカバーグラスの圧で精子束がつぶれてしまうが、かろうじて数個原形をとどめて見える

このまま交尾嚢内の精子が精子束の塊として、見られていくようならオオルリボシヤンマの受精にはかなり特異な方法で遊離精子にする機能が備わっていると見るべきでしょう。今後、また8月中旬以降、産卵個体を採取しつつ交尾嚢内精子の形態を観察していきたいと思います。
                        
              一見、普通の産卵なんですが
ねー、まだ未熟とはとても思えない 19/08/2025
                                                                                                           
                        ♂型♀の産卵?今年はこのタイプの♀が複数いて、どうなってんのかな
 

 
                         


















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