2022年12月28日水曜日

Aeshna mixta の覚書Ⅲ( 移動の研究、幼虫の生育)

昆虫の移動の研究で注目されるハーモニックレーダー

 トンボ(昆虫)の移動の観察においても各種の技術が用いられていて、その技術は日々進化していると言えます。Maggioraら (2019) は近年、昆虫の生態・行動学研究の場で用いられているハーモニックレーダー (Harmonic radar) を使ってイタリアでスズメバチの行動追跡を報じています。

 これは一種の個体識別応答のトランスポンダーを背負った昆虫をミリ波レーダーで追跡するというものです。その技術自体は第二次世界大戦時に航空機の敵味方識別装置として開発されたものですが、現在これを小さなハチに載せてレーダーで追えるというのに驚かされます。ただこの技術はレーダーの出力が小さい(移動式で野外に簡易に設置するため)のでおのずと探知範囲が狭く、長距離移動するものは追いきれません。レーダー一基で周囲数百メートルといったところでしょうか。              
 スズメバチの背中に添付したトランスポンダー発信器(左写真の黒いポチが発信ダイオードこんなに小さい)

                                      
     スズメバチの移動経路▲ がレーダー、ピンクと黄色が巣 (Maggiora ら2019より) 

 先に、ヨーロッパマダラヤンマに発信器を付けて羽化後の行動を・・・といった研究例を紹介しましたが、今回の技術は少し異なっていて、トランスポンダーを使用しています。トランスポンダー自体は非電力型でレーダー電波を受けた時だけに自然発信するものなので、むしろレーダー側の性能向上が革新的であったともいえるかも知れません。先のヨーロッパマダラヤンマの例では、同時にヨツボシトンボの仲間にも装着していて、こちらは羽化後、5日ほど羽化場所からほど遠くない地域にそれらは滞留したことを確認していますから、成果が全くないわけではなかったのです。現在の技術を使えば、このヨツボシトンボについてはさらに興味深い事実がわかっていたものと思われます。
 
 一方、アメリカの Wikelsk et al., (2006) は超小型発信器( 300mg、バッテリー内蔵式)を アメリカギンヤンマ Anax junius に接着して、そのトランスミッターからの電波を地上と受信アンテナ装着のセスナ2機によって12日間(バッテリ―の寿命がそのくらい)追跡しています。同時期にイタリアでおこなった実験は地上だけでの追跡でしたからやはりスケールが違う。いかにもアメリカらしい実験です。
                    
                 超小型トランスミッターを装着している様子
  
 その結果、移動はおおよそ3日に1回起きていて、方向は南、距離は3つのケースがあって、1つはやたらめったらに飛び、その1日の飛行距離は1-4km。もう1つは一定方向に8-12km。さらに一定方向に25-150kmと長距離を移動するものがあるそうです。押しなべて平均すると日当たり58kmであったとしています。これらの移動は鳥の渡りに非常に似ていて、彼らは関連性に注目しているようです(例えば昆虫にも日長と磁場を感じ取り相互の変化で移動するなど)。
 日当たり58kmなら移動期間を単純に成熟期間と置き換えて、それに充てるならば、14日×58kmで730kmは移動可能です。案外日本産トンボにも、我々が考える以上にダイナミックな移動を行っている種類があるのかも知れません。 
               
一番上が飛んだ方向、中が飛んだ距離と個体数(3つのグループに分かれる)
下が風の向きに対して飛行方向の関係  Wikelsk et al., (2006) より

 トンボ科や生殖行動に入ったヤンマやヤマトンボなどの行動にこうした追跡技術が応用されれば、これまでなかなか分からなかった雌雄の行動が見えて来るかも知れません。個人的にはマルタンヤンマのオスの行動がどうなっているのか、なんてぜひ研究してほしいと思います。

        
幼虫の生育

 さて、ヨーロッパマダラヤンマが西ヨーロッパ~北アフリカに広く分布していて、南ヨーロッパや北アフリカの発生状況は西ヨーロッパとはかなり異なることを前項で紹介しました。今回はこれまで公表された文献をもとに幼虫の生育についてみてみたいと思います。
                   
                           Schiel et al., (2016)より

 上に掲げた表はヨーロッパ産ルリボシヤンマ属(皇帝ギンヤンマも入ってます)の幼虫生育のデータの一部です。これを見ると、ヨーロッパマダラヤンマは他種(複数年、羽化までかかる種)に比べて孵化時期がかなり早く、また羽化までの齢数が少ないのが分かります。
   これに対して日本のマダラヤンマの場合は、1967年に曽根原さんが小諸市で詳細に調べていて孵化が4月23日、9齢を経て7月23日に羽化したと報告しています。また、4月30日までに複数が孵化して8月17日までに羽化し、それらのヤゴ期間は3-3.5ヶ月(92-107日)であったとしています。上の表からヨーロッパマダラヤンマとの違いは、1ヶ月程度マダラヤンマの孵化は遅れるが、生育期間はほぼ同じといえそうです。しかし、なぜ緯度が高いドイツなどの西ヨーロッパで孵化時期が日本のマダラヤンマより早まるのでしょう?水温も低いと思われるのに幼虫生育速度も速く、7月には羽化が始まるのはどういうことなのでしょう。そう思って、北海道各地と長野県上田市の生息地さらにドイツ西部の生息地の気温を比較してみました。そうすると、意外にも上田市とドイツ西部における幼虫期間の気温差はほとんど無いことが分かりました(幼虫期間はグレーの帯で示してあります)。そうすると、単純に孵化時期の違いがそのまま羽化時期の差になっているに過ぎないのでしょうか(北海道は後ほど)。
                    Fig. 1 各生息地の気温の推移
                                                               
                         Fig. 2 卵の温度環境を変えた時の孵化時期と孵化数を示した図 (Schaller, 1968より)

 一方、Schaller(1972)は越冬卵の温度環境を変えた時の孵化状況を観察しています。それがこの上のグラフです。非常に分かりずらいグラフなんですが、ヨーロッパマダラヤンマは20℃定温の状態 ⓸ だと産卵後75日で孵化が始まります。これに対して10℃定温状態のものを産卵後35(①)、70(②) および105日 (③) に20℃に加温した場合、孵化の同期率が70日後に加温したものが最も高かったとしています。
 さらに幼虫の齢数についても、ヨーロッパマダラヤンマは産卵された卵は同じ環境の下で、すでに幼虫がたどる齢数が決まっているのだと言います。
         
                                  Fig.3 各令数ごとの生育度合いを顎幅と日数でみたもの  (Schaller, 1968より)

 この図も分かりずらいのですが、aはあご幅と齢数の関係で、b は生育期間と齢数の関係。縦軸は齢数、a の横軸はたぶんミリで、b は日です。確かにこの図からは生育環境条件が同じなら、孵化した時点で齢数は決まっているのだといえるかもしれません。生育度から齢数が決まるのではないようですね。
 彼らは、本来ヨーロッパマダラヤンマは地中海性気候のもとで繁栄した種で、次第に北方に分布を広げた(温暖化の影響もあるか?)、と考えているようで、一定期間の低温状態に卵が置かれ、その後高温(発育可能な温度)になることで、胚発生が一斉に起きて、さらに短い発育期間で羽化する。そのタイミングは実験で低温期間が70日必要だったというのです。
                    
 Fig.4 南スペインで時期別に幼虫採取した結果、冬期間でも幼虫が得られたとする図Munoz-Pozoら(1996)より

 一方、Munoz-Pozoら(1996)はスペイン南部で時期を変えて幼虫採取をおこなったところ、冬季の1~2月に最も小さな頭幅の幼虫が採集され、4月のはじめから5月にかけて終齢幼虫が採取されたと報じて、スペイン南部では一部が幼虫越冬であることを確認しました。こうなると水温の変化が知りたくなります。
                      
    Fig. 5 沼地における水深1,15および30cmの水温と気温の関係を見たグラフ (Sternberg (1994) より  

 池沼の水温の周年変化を深さ(ヤゴの生息環境に合わせた)ごとに計測した論文は意外に少なく、各県の水産試験場がおこなっている(場合もある)調査では水深が深すぎたりして、岸部のヨシ原内部などのお目当ての浅い水深でのデータがなかなか見つかりません。水性昆虫の分野では当然そうしたデータはあるのでしょうが、、。
 Sternberg (1994) はスイス国内のトンボ生息地の沼地の日内水深別温度変化をグラフで示しています。これを見ると結構トンボが生息しそうな水深では温度の逆温度成層帯ができていることが分かります。夜間かなり温度が下がっても、水温はほぼ一定で、変化も緩やかなことが分かります。多分、月変化でもそうなのでしょう。
 これらをひっくるめた上で、今度は南スペインのと西部ドイツのヨーロッパマダラヤンマの生活環を比較してみます。
                                                          
     Fig. 6 生活環の比較概念図

 上に示した図でみると、かなり両者は異なることが分かります。スペインの夏は暑く、平均気温がどうも18-19℃以上の暑さになると、成虫の行動が抑制されるようだという事の他に、地中海性気候は夏期の降水量が少なく場合によっては生息地が干上がる可能性が出てきます。だからこの時期に生殖行動をおこなって産卵してしまうことを夏眠(適当な言葉が思いつかなかったので)して避けているのだという研究者がいます。アキアカネのようにこの時期の個体は性成熟しないのでしょうか?今回、それはわかりませんでした。これに対してドイツでは成虫期間に平均気温が18-19℃に達せず、夏眠は起きないのかも知れません。ドイツでは晴れの日なら気温が10℃でオスが飛翔して、13℃でメスが産卵に飛来するとするデータがあるそうです。ちょっと日本では考えられないような低温でも活動するのですね。
 一方、本種の発育零点が何℃かは分かりませんが、南スペインでは思ったほど水中温度は気温に比べて低温にはならないらしいことと、10月に産下された卵は1月までに約90日ありますから、その間15℃あたりの水温であれば十分この間に胚発生するのかもしれません。

つづく






 

           


















  

2022年10月26日水曜日

Aeshna mixta の覚書Ⅱ

3 長距離集団移動

 本種は移動性が大きく、前項でも述べたようにスカンジナビア3国やイングランドなどには第2次大戦以降に、大陸から移動してきた個体群が定着したものですが、実は今でも本種のヨーロッパ大陸内の移動の実態は不明な部分が多いのです。しかし、断片的な観察事例はかなり蓄積しています。以下にその例を挙げてみたいと思います.

  まず、イングランドでの発生消長です。イングランド南部サセックスにあるサセックス生物多様性記録センターでは本種の発生消長を長年にわたって記録し続けています(こういう組織がイングランド全域にあるんですねー、結構活発な取り組みをおこなっています。関心のある方は sxbrc.org.uk/home を)。ここには詳細な記録があって、そのデータをお借りします。イングランド南部に位置するサセックス州の南東部は最初に大陸から A. mixta が飛来する地域で、現在も大量に飛来する事があるそうです。                     

                                                                   
 
1980年代にはわずか日当り1,2頭だった飛来数が10年後には5倍、さらに現在は最大で日当り35頭もの個体が記録されるに至っています。注目したいのは4、
6月にもわずかながら記録があることです。この時期には大陸北部ではまだ羽化はありませんから、これは確実に大陸南部~北アフリカあたりのテネラルな個体ではないでしょうか?1980年代のものはほとんどが大陸からの飛来だったと思います。国内で発生が増えることで個体数が増加しているのでしょうが、かなりの部分が大陸からの飛来が含まれていると思われます。
 Grunsven et al., (2020) は 2005年8月10年にフランスのブルターニュ半島先端から西北40km の大西洋上を航行していたフェリーにテネラルな本種♀が飛来したことを報告しています。また、Haak  (2019) はオランダ沿岸部の都市ミデルブルフにおける観察で多数の本種が公園に飛来し、摂食行動・休息を繰り返していたが、すぐにどこかに飛び去った。その飛行は指向性があって、一斉に行動していたと述べています。さらに、Dyatlova et al., (2008) はウクライナ南部の黒海沿岸のデルタにおいて2006年8月18日に推定で1km×40m当たり40000匹の♂成虫が集団飛翔をおこなっていたと報告しています。そして、ドナウ川デルタで発生するおびただしい本種が集団で北上するのではと推測しています。
                     
        ウクライナ黒海沿岸の草地に集まったA. mixta ♂の集団休息、 
Dyatlova et al., (2008) より

 これらに対して Samraoui et al., (1998) は北アフリカ、アルジェで A. mixta の移動を観察して、この地域では秋の産卵期まで山岳地帯で成熟前期間を数か月過ごすために大移動することを報じています。この生態は南ヨーロッパでも観察されています(まるでアキアカネですね)
 またヨーロッパ大陸内での本種の移動について大規模な調査を行った例もあります。 Knoblauch et al., (2021) は本種の発生地に一つであるラトビア沿岸部で鳥類の渡りを研究する巨大なネットを用いたトラップ施設を利用して、空中を移動する本種個体群を丸ごと捕獲、その消長や飛翔方向について調べるという、いかにも欧米人特有の実際的・実証主義的な研究をおこなっています。
  
                                    
巨大なHeligoland trap(高さ15m, 幅30m) 
                                                                 
                                       
トラップで捕獲されたトンボ類の捕獲消長(Knoblauch, 2032より)
 
 巨大トラップには主に4種のトンボが捕獲されたそうです(上の図)。これを見るとトンボの飛来はある日突然ワーっと大飛来があるのかと思っていたら、結構長期間にわたって決まった方向(このトラップは北に開口している)から飛来が続くのですねえ。ヨーロッパマダラヤンマ(上から2番目)の飛来は際立って個体数が多く、約20日ぐらい3つの大きなピークを作って飛来する事が示されています。各ピークの位置は多少ずれますが、だいたい4種とも同じ日に記録されているのも注目されます。

 さらに彼らは、これらの飛来状況と気象状況を調べたところ、唯一、気温との関係が認められ、風向、雲量、湿度などは関係性がほとんど無いことを報告しました。これは意外でした。風向とは関係がない?と。さらに図のような網のケージをもちいて、中でトンボを飛ばしトンボの向きに指向性があるのかを記録しました。その結果、この地域でヨーロッパマダラヤンマは南南東に飛ぶ飛行指向性がもともとあるのではとしています。こんな小さなケージ内で本当に記録できるほど中を飛ぶのかい?と思っていしまうのですが?つまり、トンボにはあらかじめ飛んでいく方向が生まれながらに決められていて、それは風向きなどに左右されず、渡り鳥のように本来の本能(私が勝手に妄想してます)で行動している可能性があるということなのでしょうか?
                     


 日本の研究者と違って、とにかく思ったことはやってみる主義の欧米の研究者らしいといえばそうなんですが。またそれらしくデータを一応出してしまうのがすごい。こんなこと日本人にはできないのではと思います。こんなことをやっている人もいます。超小型発信器をヨーロッパマダラヤンマに装着して羽化後の飛翔を追跡するものです。
                    
                        (Hardersen, 2007)より

 図のような25mgという超軽量の発信器を付けて羽化個体を飛ばし、探知範囲80mの受信機で追跡するというものです。(我々からすれば、羽化個体なんて一気に飛び去ってしまって、追跡なんか無理だと思うのですが)結果は、やはり一気に飛ばれ、追跡はできなかったとし、この方法でA. mixtaの羽化個体を追跡するには不適だったと述べています (Hardersen, 2007) 。当たりめーだ!と誰しも言うのですが、でもそうでもないのです。その後あきらめていない研究者たちは、これらの経験をもとに、上空数百m、幅1km、長さ、数キロの空域の小昆虫の飛翔を探知できるような専用の小型ミリ波レーダーを開発して観測を計画しているようですが、このコロナ禍で計画は中止になったようです。このレーダーは反射物の波長から科の識別が可能だという優れもので、今後の活躍が期待されているそうです。

つづく

                                                                 
























                              




2022年9月23日金曜日

Aeshna mixta の覚書Ⅰ(このブログはパソコンでご覧ください)

 ヨーロッパマダラヤンマ(とりあえず仮称で)の生態について整理する

 以前述べたロシアの研究者たちの論文では、日本産マダラヤンマと欧州産マダラヤンマの違いを、形態と生態さらに遺伝的な面から、それまでの欧州での研究例を多数引用しながら詳細に比較検討しています。改めてそれらを見ると、今更ながらヨーロッパの研究者・同好者たちの物にとらわれない自由な発想の下、観察・研究に取り組むその情熱には正直驚かずにはいられません。

 マダラヤンマの生態については、まだまだ分からない点が多くあります。例えば羽化後の成虫の行動などはほとんど分かっていませんし、♀の交尾・産卵の時期がどうして♂の出現時期と大きく隔たるのかなど、さらに北海道と本州の生息地が緯度的に大きく隔たるにもかかわらず、出現時期がほぼ同じであり、一部では北海道が本州よりも逆に1ヶ月近く早まることなどが挙げられます。

 こうしたマダラヤンマの諸問題を究明するにあたって、ヨーロッパマダラヤンマの生態を理解することは逆にマダラヤンマの生態解明に何らかのヒントを得ることができるかも知れません。そこで以下に少しずつヨーロッパマダラヤンマの最新の生態を整理していきたいと思います。まずは分布。

1 ヨーロッパマダラヤンマの分布
 Onishko et al., (2022) を参考に、さらに最新の記録を加えて大雑把な分布図を作ってみました。彼らにならいマダラヤンマの分布も示してあります。この分布図を見ながらいろいろ妄想したいと思います。
                    
                                   Aeshna mixtaAeshna soneharaiの分布図. 赤がmixta, 青が soneharai

 現在、ヨーロッパマダラヤンマは西ヨーロッパからカスピ海西岸部に広く分布していて、西ヨーロッパ、英国では普通種となっています。しかしスイスなどの高標高の地域には分布が希薄です。また、カスピ海東地域の中央アジアの国々、さらに中東にかけては、数えるほどしか記録がありません。確かに地理的・気象的な要因で分布が絶えていることも考えられるでしょうが、この地域には調査する人がほとんどいないのが主たる原因ではないかと思います。今後記録がでてくるのではないでしょうか。
 一方、スカンジナビア半島三国には比較的近年、2000年代初期に記録され始め、フィンランドでは2002年に対岸のラトビアのリガ方面から7-8月上旬にかけて、南東の風が吹く午後に、集団飛来がドップラーレーダーで観測されたそうです。また、本種の英名の由来どおり、英国には1940年代に大陸から集団飛来が観察され続け、現在では2000年にアイルランド、2004年にはスコットランドに分布を広げました。現在でも毎年、大陸からはかなりの数が集団飛来しているようです。
 このトンボの分布域は分布図からおおよそ北緯30°から60°、東経8°から56°の範囲内であることが分かります。しかし北アフリカとスカンジナビアではかなり気象条件が異なると思うのですが。したがって生活環が異なる可能性がありそうです。

2 成虫の発生状況
 極めて広域に分布する本種の発生時期は、地域によってかなり異なります。分布北限のノルウェー沿岸部では、7月下旬から10月まで見られ、8月が最盛期となるようです。中央ヨーロッパでは7-8月に羽化、産卵は8-9月で日本のマダラヤンマ(Aeshna soneharai)の発生状況より若干早く推移するようです。多くの文献やWeb情報からA. mixtaは卵越冬で1年1世代完結型であるとされていますが、ヨーロッパ南部や北アフリカになると、幼虫越冬になることが分かっています。
 スペイン南部マラガ地方では一般に6月上旬に羽化した後、生殖前休眠(約4か月間)があって7-8月は非常に目につきにくくなり、9-11月にようやく繁殖行動が見られるようになるそうです。12月にもかなりの個体がみられるそうです。ここでは最小齢の幼虫で越冬して、4月にはすでにF-1齢幼虫に成長し、早い年には何と4-5月に羽化が見られるそうで、驚きです。さらに北アフリカのアルジェリアでは5月に羽化した個体は5ヶ月も休眠した後、10月から12月にかけて繁殖行動をおこなうとされ、こうなるとA. mixtaは一概に寒冷地を好む種とはいえないように思えてきます。
 オランダにおける本種成虫の飛来消長の図がありましたので、参考に拝借しました。
  
       オランダのミッデンブルグ市公園におけるA.mixtaの飛来消長 (Haak, 2019より)
 
 これを見ると、7月上旬には極少数ですが、飛来があるようです。また、1週間おきにコロナ感染グラフのように山が8-9回見られるのも興味を引きます。オランダでは繁殖が9-10月という報告もあることから、9月中旬から10月にかけての個体数が、この公園で見られる繁殖個体の頭数と読み替えることができるかも知れません。そうすると、それ以前のほとんど大多数の個体はただこの公園を通過して行った、いわゆる移動個体だったと言えるのでしょうか。
 ノルウェーで成虫が初めて確認できるのは7月下旬ですから、いくら幼虫の生育スピードが速い本種でも当地で7月中下旬に羽化するとは思えません。おそらく、それらの時期の個体は大陸側から北上したものなのではないでしょうか。

つづく
                  






























2022年9月7日水曜日

安定同位体を用いた飛来ウスバキトンボの原産地の推定

日本に飛来するウスバキトンボの移動の実態

 ウスバキトンボは言わずと知れたコスモポリタンな種で、国内では基本的に越冬できず、極一部、南西諸島において幼虫が越冬可能であることは周知の事実です。ではこのトンボはいったいどこからやって来るのか?長年トンボ界での懸案でもありました。古くは南洋の定点観測船や、洋上の石油採掘プラットホームなどで成虫が採取されたりして、その目撃・採取傾向から東南アジア方面から飛来するのではという推測がなされていました。現在でもそれ以上の進展はなく具体的な証拠もなかなか見つからず、憶測の中でのウスバキトンボの移動が論議されているのが現状です。

 2021年に発表された「水素安定同位体を用いて明らかになったウスバキトンボの日本への長距離移動」(タイトルは筆者訳なのでちょっと😓)なる論文に目が留まりました。水素安定同位体、聞きなれない名前です。なんでも水素原子には陽子、電子の他に中性子の数の違いから質量の異なる3つの水素があって、これらをまとめて同位体と呼ぶそうです。水素は中性子(質量が大きい)の数で軽水素(中性子を持たない)、重水水素(中性子が1個)および三重水素(中性子が2つ)に分けられ、自然界中の水素のほとんどが軽水素で占められ、重水素が次に、三重水素はごくわずかしかないそうです。三重水素は福島原発事故で問題になっている汚染水のトリチウムのことで自然崩壊し放射線(β 線)を放射することから、放射性同位体との呼ばれ、自然崩壊しない軽水素と重水素を安定同位体と呼ばれています。

 前置きが長くなってしまいます。でもこの辺を理解しておかないと論文の主旨がわかりません。私は理解するのに結構苦労しました😭。
 さて、それではその水素の安定同位体(軽水素と重水素)をどうすんだい、です。水素は水を構成する元素ですから水循環を通して最終的に私たちの体、もちろんトンボにも取り込まれています。ここで、軽水素と重水素の比率(水素安定同位体比)に注目すると、地域によってその比に差が見られます。軽水素は蒸散によって減少する特性を持っています。また降雨に含まれる水素同位体比は緯度が高くなると重水素が減少します(緯度効果)。さらに標高や降水量などの地理的特性によっても大きく水素安定同位体比は異なると言います。
                                                          
                          推定された降水量で重み付けされた年間平均降水の水素安定同位体比の世界分布図
     Ehleringer et al., (2008) Environmental Science and Technology, No. 26 Environmental Forensics.より

 現在、世界の年間降水量の推定のモデルを基にした各種の元素の分布推定が行われていて、水素についても上の図のとおり水素安定同位体比の世界地図が示されています。この様に同じ水素でもその構成比は地域によってかなり異なることが分かります。

 さてウスバキトンボですが、幼虫は降雨による影響が最も大きい池沼で育ちます。ですからヤゴはその地方の特有の水素安定同位体比を示す水素を体に取り込んだエサを食べ、成長して羽化することになります。しかし、成虫が羽化後移動して新たな餌を食べ続けたら、エサとなる昆虫が育った地域の異なった構成比の水素がそのまま体内に取り込まれてしまいます。ウスバキトンボに含まれている水素を分析してその水素安定同位体比を調べて、羽化した地点を割り出そうとするならば、羽化後成長する部位や組織はサンプルとしては使えないでしょう。羽化時点で新たな水素を取り込まない部位はどこか?それは翅です。翅は羽化後、体液の循環がストップして中にあった体液は胸部に吸収されて無くなってしまします。
 論文では日本各地のウスバキトンボを季節ごとに集めて、翅に含まれている水素安定同位体比を分析し、上に示したような世界各地の水素安定同位体比のデータと突合せてその羽化場所を探ったものです。
 内容は以下の様に要約してありました。
 2016 年 8 月から 9 月に国内 6 地点で捕獲された57個体、2017 年 4 月から 11 月まで捕獲した132個体を用いて、それぞれの翅に含まれている安定水素同位体(δ2H)を分析したところ、
1 その値からサンプルの大部分が国外から移動して来た個体であると判断できた。
2 日本起源と思われる個体はその年の11月にのみ出現し、日本産は平均して海外から移動        
  して来た個体よりが体重が有意に軽かった。
3 海外から飛来した個体の原産地は、インド北部やチベット高原など、はるか西の広い地域           の可能性があった。
4 シーズン後半は日本近郊の中国中北部や朝鮮半島からであった。
5 4 月のサンプルについて最も狭義的な解釈は南部の地域であるミャンマー北部から中国南 
    部またはおそらくボルネオ・スラウェシであることを示唆させた。
 と、ありました。こうして論文を見てみるとかなり遠方かつ広範囲から飛来していることが明らかになり、しかも一律に同じ地域からの飛来ではなく、季節性があるのにも驚きました。今回の論文は初めて原産地の地域(国名)を明らかにしたことで、これまでウスバキトンボの謎だった海外飛来説を初めて証明したことになり、これは画期的なことだと思います。また東南アジアよりはるか西方からの飛来が明らかになったことは、改めてこの論争に一石を投ずることになったと思います。トンボの世界もそう単純じゃないということですね。

 ウスバキトンボの長距離移動については、すでにBorisov et. al., (2020) によって水素安定同位体比を用いた、中央アジアのウスバキトンボの飛来元の研究がおこなわれていて、それによればタジキスタンにおける5月のウスバキトンボは東アフリカからの飛来種であり、その後それらから羽化した個体群が10月まで国内でみられる。そしてその一部は秋に北インド、インド洋を飛び越えモルディブに達し、さらに故郷の東アフリカまで戻る約14,000kmにもおよぶルートを超長距離移動していると予想しています。
                    
         ウスバキトンボの東アフリカータジキスタン―モルディブ―東アフリカを周回飛行するルート
         Borisov et. al., (2020)より    

 近年のDNAの応用やこうした物理・化学分析技術の進展がどんどんトンボの世界にも広がって、これからも多くの面白い発見があるものと思われ、トンボ屋としては期待が膨らみます。願わくばぜひ、日本人が中心になってやってほしいですね。
 
 なお、安定同位体の分析は民間でも請け負っていて、1点が1万5千円ぐらいです(前処理は別料金)。こうした環境化学分析の中で安定同位体分析装置はべらぼうに高いにもかかわらず、意外に分析代が安いのには少々驚きました。安定同位体を用いて物事を評価する分野は非常に多くなってきて、結構需要があるのでしょうね。トンボに限ってもいろいろ思いつくところがあるんじゃないでしょうかね。

引用文献
 Hobson et al., (2021) Long-Distance Migration of the Globe Skimmer Dragonfly 
          to Japan Revealed Using Stable Hydrogen (δ2H) Isotopes. Environmental      
          Entomology, 50(1), 247–255. 
 Borisov et. al., (2020) Seasonal Migrations of Pantala flavescens (Odonata; 
         Libellulidae) in Middle Asia and Understanding of the Migration Model in the
         Afro-Asian Region Using Stable Isotopes of Hydrogen. Insects 2020,11,
         890; doi: 10, 3390/ insects 11120890 www.mdpi.com/journal/insects


2022年8月30日火曜日

マダラヤンマの謎(発生期間中は随時更新あり)

 マダラヤンマは何物?

 先のブログで述べたように、これまで日本産のマダラヤンマはAeshna mixta soneharai であったものが、Aeshna soneharai として種に昇格したことを紹介しました。その後このことについて、少し調べていたのですが、あらためてマダラヤンマ A. soneharai (A. mixta の和名はヨーロッパマダラヤンマとでもなるのでしょうか)をみてみると、まだまだ謎に満ちた部分が多いように思えました(と、いってもまた、私だけの思い込みなのかもしれませんが)。                 
                     
                         生息地の景観
 マダラヤンマと欧州産 mixta (いちいちめんど臭いので、ここではとりあえずヨーロッパマダラヤンマとします)の青型メスの違いは斑紋の違いから何とか区別ができそうに思いますが、オスはますます難しいように思えてきました。識別点の1つである頭部の前額上に明瞭に現れる黒のカタカナのエの字斑はweb上で見てみると、これも結構変異があって一概にこの部分で両者を区別できないことが分かりました。結局、遺伝子型の違いでしか識別できないとなるとこれはこれで、論議になるのではないでしょうか。
 マダラヤンマの発生は地域によっても異なるのでしょうが、ある日にワッと現れて、しかも年によって見られる個体数が大きく変動することが多いように思います。その「ある日」は、本州の中部、関東あたりで8月末期から9月第1週と毎年大体同じで、福島県の産地もこれに含まれます。
 ところがです。県内の生息地の場合、実際にはヨシ原の開放水面にて日中ホバリングや交尾が見られる9月第1-2週よりも、さらに10日以上早く現地に飛来してることが分かりました。これらは夜明けの早朝5時前後から30分程度しか活動せず、以後、夕刻を除いて終日全く見られなくなります。早朝の飛翔は多分は摂食を目的としているのだと思いますが、詳しいことは分かりません。この時間帯にはギンヤンマが活発に活動していますが(この時間に活動しているとは思いませんでした)、常に決まった水域上を低く、恐らく摂食飛翔だと思いますが、干渉しあうこともなく多数のオスが入り乱れて飛んでいます。マダラヤンマが水域に出てホバリングする場所とは異なり、両者が争うことはありません。そして、ギンヤンマも20分程度で5:20には水域から完全に姿を消します。

つづく
                    
                黎明の空を背景にホバリングするまだ若いオス


9月1日 投稿

 2022年のマダラヤンマは8月24日に初確認しました。例によって早朝5:01に1オスが水域をホバリングしました。これ以後、姿は見せず、9月1日にようやく同じく4:56、5:40にそれぞれ1オスが水路に出て、ホバリングしながら摂食行動するのを確認しました。一方、この時期にいわゆる成熟期に見られるの黄昏飛翔は全く観察できませんでした。成虫は一日を通してヨシ原内で過ごし、出てきません。それでも夕方になるとヨシ原内部のヨシがまばらに生えたような場所(約2m四方)で縄張りを作ってホバリング飛翔しながら摂食行動おこないます。時折、上空を飛翔するトンボを急上昇して迎撃します。これ以外ほとんどの時間はヨシ内部に静止していることが多いようです。この行動も17:30には終わってしまいます。この他では1例だけ夕刻、池の縁のフトイの根際を突っつくような飛び方をする個体を見ました。

 もしかすると、この時期はまだ完全に成熟していない可能性があるのではないでしょうか?半成熟の状態で広いヨシ原を伴う池沼に飛来して、そのヨシ原内部で約10日以上かけて完全に成熟するのでは、と。早朝飛ぶ行動は成熟するとともに時間が遅くなり、繁殖時期には6:30ころになります。これまで私や、多くの同好者の方々は朝7時ころから現れる、配偶行動を行う完全に成熟した本種の姿だけを見ているのだと思います。実はそれ以前に約10日間以上の謎の成熟期間がマダラヤンマにあるようなのです。ちなみに9月6日に採った♀は体の硬さや色彩も完全に成熟しているように見えましたが、卵巣は未発達でした。
 観察地では、これまで一回に数頭の個体が早朝の飛翔をおこなうのですが、1昨年、溜池の工事があったせいか環境が変わり、今年の飛来は極端に少なくなっています。さらに、この池は春先に水路を完全に干し、水生植物群落を刈り払って焼却する作業が行われていて、マダラヤンマが育って羽化することはありません。観察個体全てがどこからかの飛来個体なのです。

 先日、webのサイトで北海道のマダラヤンマを紹介していました。驚きました。その日付です。何と8月中旬に成熟虫が採れているのです。その方に詳しく伺うと、すでに水域に8月上旬から見られるとのことでした。つまり本州の中部から東北地方にある生息地より一ヶ月以上早く発生しているのです😱。北海道すべてがこうだとは言えないのかも知れませんが、文献を見ても本州よりは早いように思いました。
 そこで、なぜなんだろう、です。少なくとも本州よりも寒冷な土地で発生が早まる理由は何か。
つづく

9月16日投稿
 最近、私は見れば見るほどヨーロッパにおけるヨーロッパマダラヤンマ(勝手につけた)と日本のマダラヤンマは、同種じゃないかという気がしてきました。この辺りは核DNAの比較も行わなくては結論が出ないとする専門家( F 博士、ガンバレー😃)の意見もあることから、今後紆余曲折が出てくるものと期待しています。
 さて、福島の場合、マダラヤンマは配偶行動が見られる7-10日前の期間はヨシ原内部で何をしているかは分かりませんが、早朝を除いて表にでてきません。この時期の個体は成熟個体と体色や体つきでほとんど見分けが付きません。私はこの時期の個体は見かけ、仮の成熟期でまだ精巣や飛翔筋が未発達なのではと考え、体重を計測してみることにしました。特に飛翔筋はトンボの場合、体重の30%以上を占めると言われ、この時期に飛翔筋の筋肉量が増加すると考えたのです。つまり、♂どもは日々鍛錬しているのだと。

マダラヤンマの体重増加
 早速、早起きして採集に努めましたが、さすがにここ3年コロナで網を1回も振ったことがなかったので、腕が鈍り、せっかくのマダラヤンマをみすみす逃す失態を繰り返し、ようやく9月1日に2♂を捕獲しました。デジタル式の化学天秤(0.001gまで測定可能)を用いてこの♂たちの体重を測定してみたところ、何と1gもありません!1円玉よりも軽いのです。これは今後どんどん体重が増えるぞ、とほくそ笑みながら、捕獲を続けました。ところがガーン、いっこうに体重は増えませんでした。というより見かけの成熟期と成熟期の個体の体重は全く差が見られません。当初の飛翔筋の増加や精巣が発達する期間との予想はもろくも崩れ去りました。ジャー何なのこの期間は😡
                                                             
                                                                                                                                                                                       最初の飛来後、新たな個体が池に飛来することは殆どない?
 もう一つ、気になったことがあります。最初、マダラヤンマを捕獲した池は通常多くて4頭がホバリングするキャパの池です。ここで4頭を採って、2頭を振り逃がしました。4頭体重を測った後、夜にガマの下茎に戻しました。ところが、最後の個体を採った翌日から、この池には1頭も見られなくなりました。慌てた私は直ぐ近くの池でも同様に♂を捕獲して体重を測りました。しかし、この池も同様に全くマダラヤンマは姿を見せなくなってしまいました。今現在、この2つの池にはマダラヤンマが不在です!
 最初の池は冬季にカラカラに水を干してしまうので、マダラヤンマが羽化することはありません。2つ目は多分、羽化はしている可能性はあります。いずれにしても2つの池には、8月中旬に最初に飛来したマダラヤンマしかいなかったということです。ギンヤンマのように採集すれば、翌日にはまた別の新たな個体が入ってくるということは、どうもなさそうなのです。これは意外でした。こんなことがあるのでしょうか?福島特有の現象なのでしょうか。

つづく

 10月1日投稿

ヨシ原依存型ヤンマ
 この時期は成熟期後期と言っても良いと思います。さすがに朝夕の気温の低下は著しく、すでに夜明け時で20℃を上回るようなことはありません。大体本種の活動開始は19~21℃(福島では)なので、この時期は9時を過ぎてからの活動開始となります。12:30あたりまでは活動しますが、以後ほとんど活動する♂は見られませんし、黄昏飛翔もありません。日中の活動もヨシ・ガマ原内部の狭い範囲内でホバリングを交えた飛翔を観察することはあるのですが、そのテリトリーの維持は長くて1分、たいてい数秒から数十秒です。そしてヨシ・ガマ原広く飛び交う様にして視界から消えてしまいます。ヨシ原には数頭の個体がいるようですが明確なテリトリーや行動範囲は認められません。

 このためもう一度、これまでの観察記録をひっくり返して見てみると、本種の生息はヨシ・ガマ原と深く結びついていることがあらためて認識できました。ある一定の大きさ以上(良く分かりませんが、30×30mくらい)のヨシ・ガマ原を有する池沼でないと生息せず、最初の飛来個体は理由は分かりませんが、しばらくその中で過ごすことはまちがいないようです。これまで本種は繁殖期に入ってからも水域にギンヤンマがいると、激しく排除され水域に出て繁殖行動ができないと言われ、私もそのように感じていました。水域に出ていった個体がギンヤンマから激しく追い立てられている姿を何度も確認していましたから。そしてギンヤンマの圧力が(個体数が減る)軽減する9月中旬以降になると積極的に水域で繁殖行動を行うものとして理解していました(ただ、はたして生息地となる池に飛来後,混生する大型ヤンマ類によって開放水域に入れないことが原因で生殖行動が遅れることが本当にあるのだろうか、という疑問はあったのですが)。

 2021年、そして今年も、従来の説をくつがえすような本種の生態を垣間見る事態が生じました(以前のブログにも紹介しました)。なぜか、ギンヤンマが姿を全く見せない状況が続いたのです。にもかかわらず本種は9月中旬の繁殖時期になっても開放水域にほとんど出てこないで、ヨシ・ガマ原内部で行動し、時折開放水域に出てきてテリトリー飛翔したり探雌飛翔をおこなったのです。もちろん水域内でも交尾・産卵も確認できました。その後、上述のように発生後期になっても基本的に本種の行動はヨシ・ガマ原内部であって、ますます開放水域には出てこなくなりました。

 これまで言われていた、マダラヤンマは大型ヤンマ類による排斥行動によって、本来繁殖域であるべき開放水域に出ていくことができず、それらの個体数が減るとようやく解放水域で繁殖行動を行うようになる。ではなく、最初から開放水域が繁殖の場ではなくヨシ原内部が繁殖域であったにすぎず、他の大型ヤンマが居ようが居まいが関係なく、水域に出ていく頻度はあまり変わらないのだという考えが今年の観察でますます強くなりました。
 本種は明らかにヨシ・ガマ原がなくては生息できない、ヨシ原依存型の生態を有する典型的なヤンマだと考えられます。これは同様にヨシ原に見られるアオヤンマにも通ずるところがありますが、全く同じとはいえず、本種の方が、よりヨシ原への依存度が高いのだと思います。
 そして、この本種特有の生息地選択性を見た時に、ヨーロッパマダラヤンマとの違いに気が付くのです。

つづく
 



























































2022年7月19日火曜日

福島のヒメサナエ Sinogomphus flavolimbatusを求めて

福島県では生息地が少ないヒメサナエ
  福島県で最も生態的知見が少ない種と言えば、まず何と言ってもこのヒメサナエでしょう。これまで知り得た生息地は、地図にしめしたように、なぜか県の端っこばかりです。このトンボの生息地はどんな環境?と聞かれても、すぐにパッと説明することができません。何というか、表現できないような独特の雰囲気・特徴があって、単に山間の渓流とはいかないように思います。
                                                           
                                       福島県におけるヒメサナエの生息地(地図は国土地理院地形図より)

 喜多方市(旧山都町)の生息地は飯豊山麓にあり、本種が広く見られて個体数も多いのですが、クマが結構いて数年前にも出くわしました。まあ、かなり離れてはいたのですが。今回ヒメサナエの観察地をいろいろ考えた末、やはりまた、この旧山都町宮古の渓流に行って見ることにしました。 
 これまでこのトンボの生態をじっくりと観察したことがなかったので、今回は少し腰を据えてみてみたいと思いました。観察ポイントは上空が開けた渓流で、写真のような景観です。もうこの段階で、ヒメサナエの生息環境をうまく説明できません。
                     
            
                  生息地の景観(喜多方市山都町宮古付近、18/07/2022)

 当地には9:40に到着しました。すでにオスたちはそれぞれ石の上に止まって、メスの飛来を待っています。視野には5頭のオスが、近い場合は40~50cm間隔で止まっており、サナエ類のなかでもその間隔は最も狭い感じです。オスどうしの争いもそれほど激しくなく、すぐに決着が付いて、また同じ石に仲良くならんで止まったりします(写真下)。他のサナエにこういうのはないでしょう。
 気になることがあります。オスの止まる石は、何というかこれまた説明しにくいのですが、止まる石がどんな環境にあるのか、まったく一貫性がないのです。かなりの急流の中にある石だったり、片やさらさらと流れる浅い流れにある石だったり、大きな石、小さな石さらに堰堤の上であったりで良く分からないのです。逆にこれはメスについても同様なことが言えるのかも知れません。もしオスたちが止まっている石の周辺に産卵に飛来するとすれば、メスが好む産卵場所は河川のありとあらゆるところになって、あらかじめ飛来場所を予想することは出来ないでしょう。  
                    
            全く逃げないカジカガエル、石になり切っている?
                          
                    あなたたち、雄同士でも仲が良いのかい?

                         


ただひたすら、ほとんど飛んでこないメスを待つオスたち、何やってんだろ?

 観察に選んだ場所は、オスが数頭、石の上に点々と止まっている、流れがやや穏やかな場所で、両側と上空が開けています。観察を始めてすぐにメスが上流から低空を猛スピードでオスたちがいるところへ飛来しました。2頭のオスが瞬時に反応してメスを捕まえ、塊になって水面に落下しました。そしてペアになって飛び立ち、目の前をゆっくりリング状になって飛び、隣接する木々の梢に上がっていきました。この間10秒もなかったと思います。この後同じようなメスの行動を1回観察し、やはり交尾態となって樹上に消えました。

私の個人的な思い込みによるヒメサナエの配偶戦略?
 最初に目撃したメスの行動を見ていると、明らかに産卵を目的に飛来しているのではなく、交尾を目的とした行動なのではと思われるのです。午後、4時半までこの場所に張り付いて観察を続けましたが、その後オスたちはメスをみつけることはありませんでした。ただひたすら石の上に定位し続け、時折位置を変えるだけで、多くの個体が1時間以上、長いものは2時間近く辛強くメスを待ち続けたのです。しかし、この場所、つまりオスたちが監視している後ろの水域にはこの日計6頭のメスが飛来して産卵して行っていたのです。
 もしかするとメスは産卵と交尾に際して、飛び方、飛ぶ場所を慎重に選んでいるのではないでしょうか。一方、オスはメスの交尾飛翔(仮にこう呼んじゃいます)につられて、どんどん本来の産卵域から遠ざけられた場所で、メスを待つようにうまく仕向けられているのではないでしょうか。交尾飛翔は強い流れのあるようなところ、堰堤を通過したりなど、河川全域をわざと飛んではオスに捕まり、それを経験したオスはまたそのような場所でメスを待つようになるのでは。これを前提にして以下をお読みください。

ある日の川面での会話
ヒメサナエのオスA      いや、今日も暑いな。皆すでにお出ましか。
数分後新米オスがAの石の近くに飛来した なんだ!この野郎、ここは俺の場所だ、そっちに行け!
新米オスBはAに追い立てられた    すいません!わからなくて。ここなら良いですか?
A                                 何だ、新顔かよ。皆場所決まってんだからな!
B                川に出るの初めてで、、、
B            兄さんはここ長いんすか?
A         俺は5日前から来てるぜ。ここの石は全て持ち主が決まってんだぞ。
B               そーっすか。でもここで待てば姉さんに会えるんですか?
A   まー運が良ければな。あとは辛抱だ。あんま話しかけんな、気が散るじゃねーか。
B           すんません。こうやってどのくらい待てば良いんすかねー。
A   あのな、気が付いた時では遅いんだよ、気合いれて見張ってねーと
      あっという間に姉御は行っちまう。
B        そーすか。ところで姉さんたちはどこで産卵してんすかねー?
A    おれも見たことねーな、そういえばこの上で張ってるCが産卵中の姉御を手に入    
        れたってことは聞いたな。知りたきゃCに聞いてみろよ。
B  あとで聞いてみます。早く姉さんに合いてーなー。兄さんが
        相手した姉さんは良かったですか、どんな姉さんですか?
A  、、、、、
B      俺も早く合いてーなあ。
A         おめな、そう簡単にはいかねーんだよ。とにかく早い者勝ちだからな
        気合いれて集中してねーと、姉御は手に入れられねーんだ。
       俺も5日ここに居るがまだ姉御は手に入れたことはねー。
B   エっ!、、、、
A         ほら、いつまでもくだらねー事ほざいてねーで、集中しろ!
B             兄貴、男はつらいっすねー。
                    
                   ヒメサナエの産卵が多く見られた水域
                          
                          
             矢印の場所に産卵した。下の写真では同じ個所に複数の産卵が見られた
                       
              狭い(60cmぐらい)範囲を行きつ戻りつしつつ、打水産卵する
                          
                         
                          
                          
                          
                極めて狭い10cm四方の水面にホバリングしながら打水する

 一般に本種の産卵様式は、産卵域に飛来した個体が近くの石の水際などに止まって卵塊をつくってから、少しホバリングして打水産卵して、また止まり卵塊をつくってを数回繰り返す。あるいはホバリングしながら卵塊を作って打水産卵するを繰り返す。というのが一般的で、例外的に石に止まったまま尾端を水中に入れて放卵することもあるそうです。
 今回産卵を最初から最後まで見れたのは4例でしたが、3例は、高速で飛来したメスは産卵に適した水域で狭い範囲(長さ約40~60cm)を時にホバリングを交えながら行きつ戻りつしながら間欠打水産卵を数回繰り返しました。こんなだったかなと、群馬県にかつておられて多くのヒメサナエの産卵を写真にとられているM氏に伺うと、「そんなことあらへん、それは新種や」と申され、痛く感銘を受けました。そうですかあまりこうした産卵は少ない例なんですね。今度ビデオに撮ってみたいです。
 本種のメスはオスの居ない間にサーと来て、チョンチョンと産卵してしまうようです。メスが共通して好む産卵場所というものがピンポイントであるようです。そしてそこで待ち構えるオスは逆に少ないことも間違いなさそうです。
 
 
最後に参考のため、同時に見られたトンボを上げます。
ヒメサナエ
ダビトサナエ(結構いた)
ムカシヤンマ(渓流内の石に止まっていた)
オニヤンマ
ミヤマカワトンボ
アキアカネ
オオシオカラトンボ(渓流内のやや止水的環境の場所に縄張りを張っていた)





                      


                        
       



















 
 
 

2022年6月15日水曜日

日本産マダラヤンマはマダラヤンマか?

 Aeschna mixta soneharai が亜種から種 Aeschna soneharai に変更!

 朝比奈博士は1988年に、日本産マダラヤンマ はヨーロッパ産に比較して形態や斑紋等に明らかな違いがあるとして、当時マダラヤンマの生態を初めて解明した長野県の曽根原今人氏に献名した亜種 A. mixta soneharai を記載しました (月刊むし 211:11-20) 。しかし私を含め多くの人々は日本産マダラヤンマはヨーロッパ産を原種とするA. mixta 、あるいはもう少し詳しく亜種 soneharai であるとして、それ以上のことは全く考えていなかったのではないでしょうか。先日、国際トンボ学会の会誌 Odonatologica の目次を見ていたら、アッと驚くためごろー!何とAeschna mixta soneharai が種として昇格しているではありませんか🙀、しかもヨーロッパのファウナきりぎりに1種増えたとして。

 内容はロシアの研究者たちがモスクワ市近郊で採取した A. mixta に2系統があることに気づき、詳細に形態と遺伝子情報を調べました。その結果、この2種は別種であることが判明し、一方は従来のmixtaで、もう一方は何と日本から記載されているsoneharaiだったのです。そして何よりこれまで亜種扱いであった soneharai が種として取り扱われることになったのです。驚きました。全くそんなことは頭にありませんでしたから。しかし、彼らが示した分布地図によると、残念ながら soneharai は日本固有種ではなく、東アジアから中央アジアそしてヨーロッパ東端のモスクワ周辺まで分布しています。一方、mixtaは北アフリカからヨーロッパ、トルコ、中東、北インドそしてカザフスタン東端部周辺に分布するとされています。mixtaは中国にはいないのですね。中国は東北部のみにsoneharai がいるんですねー。
 
mixtaとsoneharai 両者の区別はむずかしい
 両者の識別は結構むずかしい。飛んでいる両者を区別することは不可能です。こまごまとした違いは結構あって、それはそれなりに両者を分ける部分ではあるのですが。あまり一般的ではありません。でも写真からでもわかる点が2つあるようです。
1 雌雄における頭部の前額上に明瞭に現れる黒のカタカナのエの字斑は mixta で非常に太く、soneharai は細い。オスではこれが唯一。
2 メスを側面からみると(交尾態で見れる)、青斑紋はいずれも淡く黄緑がかる。日本でみられるような鮮やかな青型は稀のよう。ただこの色、結構日本産でも成熟初期にはまぎらわしい色合いになる場合があるので注意したい(下写真参照)。さらに識別は緑系は無理なような気がします。
 以下にネットから拝借したmixtaの写真を引用します。                                       
Aeschna mixta の前額のエ字斑紋 http://www.ipernity.com/doc/318793/23836949

 Aeschna mixta (England) https://www.jungledragon.com/image/46101/aeshna_mixta.html/zoom
                    
          見分けがつかない成熟初期のメス 福島県産の Aeschna soneharai Asahina 1988

 ロシアの研究者たちは遺伝子解析に必要なデータの多くをGenBank (アメリカ) から得ています。soneharai とした日本産のデータには2個体の遺伝子情報が使われています。これは当然、提携元の日本DNAデータバンクの情報がソース源となっています。一方、分布図作成には多くの写真を解析して両者を区別して行ったことになっています。しかし、Web上に掲載されたmixta の画像は結構変異があって、彼らが示したモスクワ近郊の産地から得られた斑紋の違いについて、全ヨーロッパの個体群に当てはまるかは少々疑問です。また、両者の交尾も観察されているので、特に分布境界地域に当たるモスクワ近郊の個体群の扱いは注意が必要だと思います。
 いずれにせよ、これからは朝比奈博士の命名した sonehari が呼び名になるのですねー。てっきり今後はソネハラヤンマかーと思ったら、マダラヤンマの呼び名は mixta に対する和名としてつけられたのではなく、1915 年に小熊捍氏が日本産トンボ目録のヤンマ科のなかで単に日本で最初に青森で得られたヤンマにマダラヤンマと名称をつけたしたものだそうです(彼はマダラヤンマがmixta であるとはわからなかった?)。朝比奈論文にちゃんと出てました。とすればこのままマダラヤンマなんでしょうか?しかし今回のことも踏まえて、日本産トンボについて一度、原点に立ち返って精査する必要があるのかも知れませんね。

 










  

2022年6月1日水曜日

喧嘩っ早いムカシヤンマ2022年の観察記(2) 追加投稿あり

羽化した成虫はいつ羽化場所に戻るか?
 多くの昆虫類には性成熟期間があることが知られています。トンボにおいても、イトトンボ類は実験的にその期間が確かめられています。しかし、行動域が大きい不均翅亜目のトンボは具体的に確かめようがありません。多くの場合、その行動様式の違い、例えば繁殖域に現れ始めた時を目安に性成熟期間を推定することもあるでしょう。ただ問題は、羽化場所に羽化個体そのものが成熟して再び戻るのかが分からない点です。
 ムカシヤンマもこの点に関しては全く具体的な知見がありませんでした。そこで、今回羽化した16頭にマーキングして、本当に羽化場所に戻ってくるのかを調べてみました。羽化は5月9日から17日まで続きました。この地域には発生地が点在していて、約200m離れた場所にも別の発生地があります。まあ、戻ってくる可能性は高くはないと思っていました。
 最後の羽化が終わった7日後から毎日、発生地の岩場に通いました。すると19日にオスが飛来していました。何と早い!しかしマーキングはありません。きっと別な発生地で、早期に羽化した個体に違いありません。このことからも、羽化後ムカシヤンマは広く分散することが予想されました。
                    

          岩場に訪れたマーキング虫(上)と何だか異様に腹部が長くスリムな雄
 
 半ばあきらめ気味に観察を続けました。25日、10:46、ついに10日に羽化したオスが岩場止まってるのを確認しました。この間にムカシヤンマの飛来はありませんでした。その後、30日には10日に羽化したメス、13と15日に羽化したオス計4頭が戻りました。一方昨年は羽化個体にマーキングせずに、その後岩場に最初に個体が見られた日を調べましたが、最後のオスが羽化した17日後に複数のオスを初観察しました。
 昨年と今年の結果から、ムカシヤンマのオスの性成熟期間はおおよそ2週間程度だと考えられました。メスは1個体のみでしたが20日かかりました。一方、多くの個体は戻らず、どうしていることやら。しかし、羽化した場所に確実に戻る個体が複数いることを確認できたのは一つの成果でした。また当然のことですが飛来したマーキング虫は交尾、産卵をしました。

岩場を占有するオスはどんなオスか
 昨年の観察から、この岩場には普通1~2頭のオスが定位することしかができず、朝から夕方まで、この岩場を巡ってオスたちの激しい闘争が繰り広げられます。日齢が進み、発生後半になると夕方、疲れからか幾分お互いの軋轢が減り、岩場に4頭以上の個体が仲良く?止まることもあります。
 さて、これらのオスは入れ代わり立ち代わりガシャガシャと闘争を行うわけですが、勝者はどうなっているのでしょう。常に同じなのでしょうか、それとも入れ替えが激しいのでしょうか?今回は羽化後、この岩場に飛来した全て(ほぼ)にマーキングして個体識別しましたから、この問題はもしかすると分かるかも知れません。
                    
                         産卵に訪れたまだ若い雌
                
                          侵入オスと戦う占有者

 5月30日に観察を開始しました。朝7:00に現地に行きました。さすがにまだかなと思いましたが、すぐにメスが産卵に訪れました。しかし、オスはなかなか姿を見せません。ようやく8時半になって岩場に飛来してきました。それから、岩場での絶え間なく繰りひろげられる闘争と静寂そして産卵、交尾が17:40まで延々と続きました。
 マーキングしたことにより、これまで観察していて、あれこれ想像していたことが目の前ではっきりと、それが肯定できたり、否定できることは新鮮な驚きでした。以下に2,3の知見を簡単に記してみます。

1 岩場を占有するのは数頭の占有経験者(古参個体)で、新規飛来個体は岩場から締め出される。岩場を占有する個体は常に他個体との闘争に高い確率で勝者となり、岩場を占有し続ける。

2 メスの産卵場所は3つの区に分けられ、オスが占有する岩場は最も産卵が集中し、交尾機会が高い。次に交尾機会が高いのは岩場わきの斜面で、新規飛来個体が定位する。しかし、午後になると、岩場からの占有経験個体が占有し、新規飛来個体は駆逐される。残る区は岩場上の草付きで、新規飛来個体はほとんどがここに定位する。岩場を除く他の区で全く交尾機会がないわけではなく、各区域で交尾が確認される。

3 産卵は午前中早くから午後遅くまで観察され、時間帯に目立ったピークは見られなかった。一方、交尾は明らかに午後に多かった。これは逆に、午後に岩場および周辺に飛来するメスの数が多いということでもある。
                   
          マツの枝先に潜り込むように止まって交尾するペア. メスは青のペイントが付いている
  


 

アキアカネの配偶行動 (2)

  精子置換はいつおこなうか?  今のところ、新井論文が非常に的を得ているように思えました。このままではやはり妄想論でしかなかったことになってしまいます。そこで改めて、新井さんが述べておられる、ねぐらでのアキアカネの配偶行動を再度観察してみることにしました。           ...