2026年10月22日木曜日

オオルリボシヤンマの縄張行動

  もういい加減、オオルリボシヤンマから離れたいというのが本音です。しかし、知れば知るほど不思議なトンボだということに魅かれ、また、ついつい山を越え、正直見たくもない沼へ車を向かわせてしまうのです。
 今年はマーキングした♂を目印にこれまで、多分そうじゃないかなあ、と予想でしかオオルリボシヤンマの配偶行動を言えなかったものを具体的に数値化して観察したいと思います。

 なぜ、ほとんど交尾ができないのにオスは激しい縄張り争いを延々と池の上で繰り広げるのか?1回の縄張時間はどのぐらいなのか、縄張り♂はいつも侵入者をけちらしているのか?♀が侵入した時の縄張り♂の行動は?そして♀が侵入した時、同時に複数の♂が追跡して縄張りに侵入した時、縄張り♂が優位性をいつも維持できるのか等々。
                   
          ♀(矢印)を執拗に追いかける♂たちこの段階ですでに縄張り♂がどれか分からない
                    
                       さらに1♂が参戦
                    
              ♀を追尾していた先頭の♂が♀を捕捉した(矢印)
                     
                   ♂から逃れ、水面近くに降下した♀(矢印)
                    
         さらに水面近くの植物の茂みに逃げ込み身を隠す♀(矢印)、♂は♀を見失ったようだ

 ここまではいつもの観察内容です。問題は交尾がほとんどできない♂たちがなぜ激しく争うのかです。ここで縄張り♂の行動がある程度わかってくれば、縄張りの目的や、その後の交尾行動につながるヒントが得られるかもしれません。
                    
                岸から離れた開放水面を飛ぶマーキング♂

              縄張り飛翔する赤点♂、この大きさだと判別はきびしい
    
      縄張り♂として、たくさんの情報を与えてくれた青っぺ、マーキングしてから20日以上も留まった

一日における闘争回数の推移
 縄張りが形成された池において、何回縄張り♂(縄張りを占有するオスはしょっちゅう入れ替わる)が侵入して来る♂と闘争するのかを数えました。結局目が離せませんから、ほとんど休む時間が取れず、終わったころは疲労困憊となってしましました。その結果をグラフにしました。当然1日だけでのデータでどうだとは言えませんが、これまで断片的に知り得た結果を支持するものであったと思います。例えば、昼に極端に回数が減って、午後 4 前後に再び激しい闘争が起きるなど、具体的な回数は分からなかったけれど、おおむねそれらに合致する結果だったと思います。 

                   縦軸が闘争回数、横軸が時間
 
闘争回数と♀の飛来数との関係
 だれもがこの問題を考えた時に、♂の活動が活発になる時には、きっと♀がたくさん飛来するものだと思うはずです。しかし、思うだけでは説得力がありません。そこで、闘争回数を調べると同時に飛来したメスの数も一緒に記録しました。その結果が下のグラフです。上の闘争回数のグラフとほとんど同じ推移を示しました。
 ここに1つの疑問が生じます。♀は極端に言うと交尾をしません。♀にとっては疫病神のように付きまとうウザイ♂がいるにもかかわらず、何故わざわざ♂が多数いる時に産卵に訪れるのでしょうか?
                   

 良く観察すると、飛来したメスには2つのタイプがあることに気が付きました。1つは産卵。もう1つは産卵はせずに縄張り♂(場合によっては池周辺に居る♂たち) をわざわざ追尾させるように池内外を飛び回り、結果的に♂(縄張り♂以外もいる)を池外に連れ出す♀、の2つのタイプです。上のグラフをタイプ別に分けたものを示します。
                         

 
産卵のために飛来するものよりも、♂を池から連れ出すものの方がやや多いような結果となりました。これは何を意味するのでしょうか?ここに本種の配偶行動(交尾に繋がる鍵)が隠されているような気がしてなりません。

縄張り♂の闘争回数、勝率および縄張り維持時間
 縄張り♂が長時間入れ代わり立ち代わり縄張りに侵入して来る♂たちと激しい闘争を続けることはどう考えてみても、そう長くは続かないと思います。では実際にはどうか?調べてみました。これは全てマーキングした♂が最初に池に縄張り♂として飛来したのを確認してから調査を始めました。
                    
 
 19 個体(同じ個体も複数あるが、ほとんどは一回限り飛来したもの)のデータを得ることが出来ました。縄張りの維持時間は個体によって極めてばらつきが大きく、最大で 86 分も縄張り守り切る者もいました。闘争回数も敗退した個体で見ると僅か6回戦で負けるものもいれば、37 戦も戦うものもいるなど個体によってかなり差がある様でした。しかし平均勝率は96%と非常に高いことが分かりました。次に縄張り放棄の理由を見ると、最も多いのは闘争に負けるたことが原因となることが40% で、ついで♀を追いかけていくものが 32%、自分の都合で離れるのが 20%、残りが不明でした。
 闘争で負けて縄張りを追い出されるのが一番多いのには少し意外でした。最もあれだけ激しくバシバシやられるのでは、仕方がないのかも知れません。それとやはり、♀を追いかけて縄張り♂が出ていくことが多いのも確認できました。ちなみに、複数の♂が♀を追いかけ、あるいは池の外側で縄張りを形成している♂が一度に多数池に侵入して来る場合は、面白い結果が観察されました。
                    

 表の占有は縄張りと読み替えてください。表を見ると、縄張り♂が♀の真後ろにつけたのは半分にもみたない 42% に過ぎませんでした。また、注目される行動としては追尾を途中で止めて、縄張り維持に徹し、他♂を排除する行動をとったことです。


つづく

 

 


 
           



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