ひとまず今期分のまとめを
2023年8月17日木曜日
今期オオルリボシヤンマの交尾について分かったこと(整理)
2023年8月14日月曜日
迷宮入りになるかオオルリボシ参り
2023年7月28日金曜日
また始まった、泥沼状態のオオルリボシヤンマの観察 (このブログはパソコンでご覧ください)
2023年7月2日日曜日
キイロヤマトンボやーい!
いよいよキイロヤマトンボの探索開始。
阿武隈高地は白亜紀花崗岩から形成されて、特に浸食・風化が進んだ地域と言われています。したがって、河川下流部では風化した花崗岩や片麻岩から成る砂が河床に広範囲に堆積する河川が多く、各地にキイロヤマトンボが生息しそうな河川が見られます。
夏井川はそうした河川の代表的なもので、私も1990-2000年にかなりの回数かよってナゴヤサナエやキイロヤマトンボの探索を行ってきました。しかし、特に後者のキイロヤマトンボについては全くその生息の痕跡すらつかめないでいました。ところが2021年に斎藤舜貴さんによって中流域で複数が12-Ⅶ-2021に採集されました(斎藤、2022, Tombo 64: 45)。早速、斎藤さんの御厚意でに採集地点を教えていただき、翌年の春に出かけてみました。ところが、現地に行って見てびっくり、生息地は数年前に起きた台風による大氾濫の対策として実施されている大規模河川改修で完全に消失していました。
あーあ、もーだめだ、何でこーなる!結局、キイロヤマトンボはその後、また新たな場所で採集され、現在も福島県ではほそぼそ?と生きながらえているようです。今回は河川を変えて探索の範囲を広げてみました。
さらに驚いたのはメスの産卵です。いきなり産卵水域に水面すれすれに飛来して飛び回ったかと思うと、岸部のヤナギの葉やツルヨシの葉などに止まって、卵塊を作り始めました。最初はホンサナエもいるのかと思いましたが、確認すると間違いなくアオサナエです。卵塊を作ったメスは河川中央部に飛んでいき、水面から高さ5、60cmの普段は見られないような高さでホバリングしながら卵塊を落下させました。産卵は計6回観察しましたが、いずれも同様の行動でした。アオサナエが岸部に静止して卵塊を作る事を初めて見ました。
あいにく距離が離れすぎて300mmのズームレンズではまともな写真になりませんでしたが、参考のためにこんなことを観察したということでアップします。オスの飛翔行動は8時をすぎると全く見られなくなりました。産卵は9時以降観察できなくなりました。
なお、この観察地では残念ながらキイロヤマの飛翔は確認できませんでした。コヤマ(多分)が1オスのみが飛んでいきました。転戦です。
アオサナエが早朝飛び回る河川の景観、画面中央部の川面を飛翔する川面に倒れ掛かるタケの枝先に止まるオス(画面中央)
朝日を浴びながら中央部分の川面を飛翔するオス
同
長時間中央部を飛翔し続けるオス
中央部で産卵するメス
産卵を終え、尾端を水面に付け飛び去る寸前のメス
2023年6月8日木曜日
中通りのムカシトンボ Epiophlebia superstes の生態 1
1ヶ月遅れの発生地では
中通り地方の発生地は阿武隈高地の西麓部の一部を除いて、全て奥羽山脈にあって、これまで述べてきた生息地と異なり冬季間かなりの積雪があります。発生時期は標高や積雪の状況によって変わり、少なくとも浜通り地方とは1ヶ月以上遅れます。また生息地はブナ帯に多く、浜通り地方の多くの生息地とは環境が異なります。今回の観察は郡山市近郊の山地帯で、標高は600mほどですが、標高がもう少し高くなるとヒメオオクワガタやヨコヤマヒゲナガカミキリが見られるようになります。また、例にもれずツキノワグマの生息地ともなっていて、2,3日前直ぐ近くで、サイクリングをしていた方が襲われました。幸いムカシトンボの観察時間帯で遭遇したことはありませんが、夕方はしばしば目撃しています。浜通りと違って長時間定点に留まった観察にはこれが脅威となります。まあ、結果は大したことはないのですが、それよりたまに現れる人間のほうがはるかに緊張します。
渓流脇に続く林道、舗装されていてこの上を飛ぶ
今年は早くなかった羽化時期
通常この生息地は5月下旬から本種の姿が林道上にみられますが、今年は6月5日に初めて確認しました。福島県も例にもれずサクラは2週間も早く開花しましたが、一方、山々には例年以上の積雪がありました。こうしたことが逆に発生を遅らせたのかも知れません。そこで発生初期6月8日に林道での飛翔行動を終日観察してみました。この日は午前中は晴れ、12時ころから薄曇りで14時すぎには完全な曇りとなりました。気温も例年より少し高めでしたが、14時以降は急激に気温が低下しました。結果を下に示します。
2023年5月26日金曜日
浜通りのムカシトンボ Epiophlebia superstes の観察 3 (オスのパトロールなど)
繁殖期間を前後(最初に産卵が確認された日から7日間を前期、以後を後期としました)に分けて調べてみます。先に述べたように天候(晴れ・曇り、気温)によって行動が大きく制限されるため、まず晴れの条件で、気温が大きく異なる日を繁殖前期で見てみました。それが上の2つのグラフです。グラフ上がこの時期を代表する最高温度16℃程度の日、下がこの時期にしては気温が大変高い最高温度約26℃の日です。10℃も違います。
2023年5月15日月曜日
浜通りのムカシトンボ Epiophlebia superstes の観察 2(温度の関係)
成虫の活動(飛翔行動)
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やはり、グラフから最高温度が13℃以下の低温の日になるとほとんど産卵しないことがわかりました。この地域ではこの時期特有の低温が直接、本種の産卵行動を抑制している可能性が考えられます。累積産卵率でみると、もし低温の日が無ければ、産卵期間の前半で総産卵株数の大半(80%)を占めたかも知れません。標本数が少ないのでこうだ、とははっきり言えませんが、ムカシトンボの産卵は産卵期間の初期に多くおこなわれるような気がします。
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