今季は天気が悪い
今年の9月上中旬は天気は非常に悪く、ほとんど外に出ることができませんでした。マダラヤンマについては、思わぬカトリヤンマの発見の余波を受け、肝心の発生中後期の観察ができませんでした。したがって多くの課題は未解決のまま来期に結論を持ち越しました。それでもいくつかの新知見が得られ、マダラヤンマの生態の奥深さが垣間見えました。今季明らかになったことを列記すれば、
1 本種の成虫発生期は福島県の場合、9月第1週から10月中旬で、この間、行動面から成熟前期と成熟後期の2つに分けることができる。成熟前期は初飛来から7~10日間で、この間は配偶行動をおこなわない。成熟後期はその後没姿までである。
2 本種はヨシ原(厳密にはヨシ以外にもガマ、フトイ等の抽水植物群落)に完全依存するトンボで、成熟前期は初飛来後、ヨシ原内部で成熟する。この間積極的に開放水面(繁殖エリア)に出ていくことはない。成熟期も基本はヨシ原にあって、繁殖行動を行う時以外はヨシ原内部に活動域を持つ。
3 成熟前期は早朝から活動し、この場合、気温が21°C になると活動を開始する。また気温が30°Cになると完全に飛翔しなくなり、ヨシ原内部の地上50cm以下の植物の茎に静止していることが多い。成熟期になると、早朝も交尾、産卵がおこなわれる(例:9月11日、午前6:15に産卵、6:30に交尾が確認できた)。成熟期後半になると、気温上昇が緩慢となり、その日の天候によって活動開始時間が大きく変わる。押しなべて9月後半は9時から11時となって、かなりの幅が生じる。この場合も活動開始時の気温は21°Cであった。
4 本種の主食はほとんどがアキアカネで、混生するノシメトンボは対象とはならない。
以上が今季得ることができた新知見です。もちろん、まだまだ観察が必要な部分(活動と気温の関係や発生期間中の個体数の推移など)があるのですが、今までのイメージとは少し違ったマダラヤンマの生態があることがわかりました。一応今回が今季最後の観察記となります。次回はアカトンボ類とアオイトトンボ類に目を向けていきます。
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