このトンボを終日観察してみることにしました。その日の天候もあるのでしょうが、どうやらオスは9時すぎないと出勤してこないようです。メスは7時すぎには産卵に来るのですが。観察地での個体数が多いので、観察間隔を短くして様子をみました。このハンノキ林には8つの縄張が見られ、その場所以外には縄張りに入れないオスが占有するサテライト的な場所が1ヵ所隣接してあります。その他にもサテライト的な空間があるかは、確認できませんでした。
時間ごとにそれぞれの縄張りにオスが張りついでいるかを調べ、同時に縄張りに飛来したメスの数を数えてみました。下にその結果を簡易なグラフで示しました。
縄張りで静止してメスを待つオス、これがサラサヤンマの縄張の基本だと思います
縄張内を歩くと静止していたオスが驚いてホバリングする
両者のグラフの調査間隔をそろえなかったのですが、何となくオスの活動が不活発(縄張りで活動するオスが少ない)な時間帯にメスがより多く飛来しているように見えませんか?オスの活動が活発となる3つのピークを避けるように♀が飛来している?ここには示しませんが、産卵は交尾に比べ、よりオスの活動が不活発な時に行われる傾向がありました。メスたちは縄張りの外からオスたちの様子を伺っているのでしょうか?
この湿地では産卵中のメスが雄に見つかって確保され交尾にいたることは殆んど見られず、交尾は産卵を装いながらメスが縄張内を地面低くゆっくりと飛んだ時に観察できました。でも、なかには産卵そのものが目的ではなく、明らかに自らオスに摑まることを望んで縄張りを飛ぶメスがいるように見えます。
縄張りになかなか入れないオスは、占有オスが交尾で縄張りが空くとその場所に入ることができます。そうした縄張りオスに排除されるオスが本来の湿地内の縄張りとは異なる場所、今回の湿地では各縄張りに隣接するやや乾燥した、割と上空が開けた広い草地がそうなのですが。ここを占有しているオスは各縄張りオスが飛翔警戒(そもそも頻繁にホバリングはしない)する時間よりはるかに長い時間、ホバリングする特徴があります。静止している時間は縄張りオスと変わりませんが、何かのきっかけで飛べばより長時間ホバリングするようです。警戒厳重と言った感じです。
ところが驚いたことに、この場所での交尾の機会は各縄張り(8つ)よりもむしろ多いように感じます。次々にメスが飛んで来ては交尾、そしてその度、新たなオスが入れ替わるのです。この新たなオスが果してすべて闘争に負けたオスなのか、縄張り占有経験のあるオスなのかは分かりませんが、もしかすると、この地域のサラサヤンマ個体群全体がより平等に交尾できるような種独自の配偶戦略があって、この草地はそうした中でサテライトの位置づけがあるのかも知れません。
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